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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『パラサイト』の”あの石”が8,000個!
訪問ライター・清水2000の「韓国珍スポ探訪記」VOL.37

『パラサイト』の”あの石”が8,000個! 孤高の自宅展示館「千の顔 水石博物館」

館長の宇宙的感性が大爆発!!

出たー!

 こちらも野外で出会ったら普通の石にしか見えないところだが、下半身をイメージした木製の台座、ふたつの丸い石ころをおっぱいのように見せる台座などのおかげで、見事にイヤ~ンな魅力を放っている。館長の宇宙的な感受性の前に「リスペクト!」と敬礼したくなる。

靴に目が行ってしまう

 これまで何千個の石を見ただろうか。さすがに終わりだろうと思ったら、さらに別室があった。館長の暮らしぶりが丸見えのキッチンを通り過ぎ、奥の部屋へ。光の入らない半地下のような薄暗い空間にも顔、顔、顔が。棚には並びきらない水石が、床にもごろごろと粗雑に転がっている様子に圧倒されるばかりだ。

奥の棚が湿気で崩壊しつつあるのにも圧倒される

 別室を抜け出たことに安堵もしつつ、キッチンでインスタントコーヒーをいただきながら、館長にお話を伺った。

 キリスト教の牧師として活動していたチャン・ソンニョンさん(現在82歳)は、仲間の牧師から水石をもらったことをきっかけに、毎週近くの河原へ石を拾いに行くように。ストレス発散に良いという考えだったが、やがて全国の河川に足を運ぶまでのめりこんだ。「神様からの贈り物である石を眺めていれば、心が落ち着く」のだという。

 約20年前にリタイヤし、田舎に移住して家を建てた。30年以上かけて集めた水石を展示する博物館として自宅を開放したのは、2007年のこと。当時はもっと多くの水石があったが、人に譲ってしまいだいぶ減ったそう。ちなみに開館以来初めて訪れた日本人が私だそうで、光栄な話である。

 近年はマニアが水石を採りつくしてしまったこと、また李明博政権時代に大掛かりな河川開発が行われたことから、韓国の河川で水石が見つかることはあまりなく、韓国の水石業界には輸入品が幅を利かしているのだという。館長も石を拾いに行くことはもうないが、最近は石を飾るための木製の台座を作るのに余念がない。

 話の最中、館長は「見せたい水石があります」と言って息子さんに電話をした。スピーカーで通話しているため話が筒抜けだ。「写真を全部くれ」「いや全部は無理でしょ、選んで送りますよ」といった会話の後、息子さんセレクトの水石写真が10点ほど届いた。正直すでにお腹いっぱいで、これまでたっぷり見てきた水石と大差ないようにも感じたが、館長の熱意と親子の絆の深さには頭が下がる思いがした。

 水石のいくつかは息子さんに渡してあり、彼はいつの日か「水石カフェ」をオープンするのだという。『パラサイト』ではないが、水石が館長ご家族を素敵な方向に導くはずだ。

 たっぷり時間をいただいた後、投げ銭式の入場料を払っておいとました。館長は私を見送りながら、家の外壁にはめ込まれた、ぼんやりと模様の入った石を指さし、こう言った。

「これはエルビス・プレスリー」

 どこがプレスリーっぽいのか、わかるようでわからなかったが、無限の感受性で我が道を突き進む館長の姿がとにかくまぶしかった。

●千の顔 水石博物館
住所 京畿道楊平郡玉泉面新福里949

清水2000(ライター)

ソウル拠点の訪問ライター。韓国珍スポや世界のコリアンタウンなど訪問中。

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Twitter:@simizu2000

しみずにせん

最終更新:2020/02/10 14:00
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