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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 野島伸司のDNAを持つ女優・奈緒
ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

野島伸司のDNAを受け継ぐ女優・奈緒『やめるときも、すこやかなるときも』で見せるヤバい女っぷり

野島伸司に感銘を受け、演技の道へ

 奈緒は高校1年生の時に地元・福岡の天神でスカウトされ、地元のテレビ番組や雑誌で活躍していたが、ローカルドラマ『めんたいぴりり』(テレビ西日本)に出演して以降は演技に興味を持つようになる。20歳の時に上京し、『美女と男子』(NHK)等のドラマやスプライトのCMに出演してキャリアを積む傍ら、「ポーラスター東京アカデミー」で特待生として1年間レッスンを受ける。このアクターズスクールは『101回目のプロポーズ』(フジテレビ系)や『高校教師』(TBS系)で知られる人気脚本家の野島伸司が総合監修を務めており、奈緒は野島の「本物の役者主義」という考えに感銘を受けて、入学を決意したという。

 その後、奈緒は、野島がHuluでドラマ脚本を手掛けた『雨が降ると君は優しい』に出演。本作は佐々木希がセックス依存症の主婦を演じ話題となったのだが、あらためて観ると、奈緒が演じる平川百合がとても魅力的だ。

 平川は月刊文芸誌の編集者で大物作家・小野田史郎(古谷一行)の担当になったことで小野田の極端な思想に洗脳され、やがて小野田の家に泊まり込み、信者のようになってしまう。劇中では小野田に恫喝されて平川が服を脱ぐシーンがあるのだが、メガネをかけた地味な女性だった平川が小野田に心酔するあまりにおかしくなっていく姿は、本編そっちのけの面白さで、まさに野島ドラマという感じだった。

 おそらく奈緒の中にある暗さは、野島ドラマの中で桜井幸子や酒井法子が演じた幸薄い女性の持っていた雰囲気に近い。極論を言えば、彼女自身が野島の生み出した作品なのだ。残念ながら野島ドラマはテレビドラマの主流からは外れてしまったが、奈緒を通して野島の遺伝子がほかのドラマに感染していると思うと爽快である。普通の女性の中にあるいじけた暗さを演じられる、稀有な才能を持った女優だといえよう。

成馬零一(ライター/ドラマ評論家)

1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。ライター、ドラマ評論家。主な著作に『キャラクタードラマの誕生 テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)などがある。

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Twitter:@nariyamada

なりまれいいち

最終更新:2020/02/11 00:00
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