”伝説の男”チョウ・ユンファが香港で大復活ッ!! 偽物だけ愛する『プロジェクトグーテンベルク』
#映画
チョウ・ユンファが見せる狂気性と人懐っこい笑顔
チョウ・ユンファは裏社会で暗躍する「画家」をカリスマ性たっぷりに演じている。贋札づくりの犯罪組織を抜群のリーダーシップで統制し、紙幣を刷るための特殊インキを入手するためなら、強硬手段も厭わない。冷酷な一面を見せる一方、人気アーティストになったユンのことが忘れられずにいるレイに対しては「大金持ちになって、ユンを取り戻すんだ」とお節介を焼く。なぜ、画家はレイがユンと復縁することにこだわるのだろうか? 観客はそんな疑問を覚えながらも、画家のミステリアスさに魅了されることになる。
香港映画界で伝説のスターとなったチョウ・ユンファの存在感が、そのまま画家役と重なり合う。重火器を両手に持ち、逆らう敵は容赦なく殺戮する狂気性と気を許した仲間に見せる人懐こい笑顔と男臭さ。往年のチョウ・ユンファそのものだ。また、画家は自分のことを「女を必要としないレアな存在」と自称しているが、同性であるレイにプラトニックな想いを抱いているのだろうかなどと深読みしたくなる面白さもある。
偽物にはどんなに努力して本物そっくりになっても、どうしても本物にはなり切れという哀しみがある。その哀しみは、片想いのせつさなにも似ている。どんなに愛する人のことを想っても、その想いは愛する人には永遠に届かない。画家と行動を共にするようになったレイは、やがてタイの「ゴールデントライアングル」で出逢った女性・シウチン(ジョイス・フォン)を愛するようになる。シウチンは自分はレイの別れた恋人の代用品だと分かりながらも、レイを支えようとする。贋札づくりに没頭し続けたレイは、いつの間にか偽物しか愛せないようになってしまっていた。
「偽物も心を込めれば本物に勝る」という画家の言葉は、本作のメインテーマだ。潜入捜査するうちに、義理と人情に縛られていく男たちの葛藤を描いた『インファナル・アフェア』の脚本を手掛けたフェリックス・チョン監督らしい内容となっている。アジアにつくられた西洋の街である香港ならではの、いい意味での伝統的B級感も作品全体から感じさせる。
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