ありきたりな“町おこし”では地方がダメになる?担当者も困惑の「町おこしイベント」が乱立する理由
#インタビュー #地方創生 #町おこし #小笠原伸
「餃子で外国人観光客にPR!」は正解か?
――「地方創生」においては、各自治体で成果が測定されるんですよね?
小笠原 「まち・ひと・しごと創生」においては、各自治体ごとに目標を設定し、KPI(重要業績評価指標)によってそれぞれの進捗が評価されます。しかし地方自治体にいきなりこれを求めるのは難しいと思います。名産品を開発するならば、それがいくつ売れたのか、どれだけ雇用を増やすことができたのか、その数字こそがKPIなんです。でも比喩的に言えば、「この事業をやって地元の人が笑顔になった率100%」というような数字の出し方になってしまうことがあります。まちづくりの主体となって動いている方々は、一生懸命やっているんだと思います。でもこれまでとまったく違う考え方を急に求められても、なかなか対応できないのが人間です。補助金があり枠組みもあり、動きやすくなったけれど、どうしていいかわからずに、とりあえずイベントを打つ――というようなケースもあると思います。つまり、当事者である自治体の方たちもある意味では困っているのではないか、と思います。
――地方創生を仕掛ける当事者が持つべき姿勢とは、大きくまとめるとどういうものなんでしょう?
小笠原 たとえば今、宇都宮市では外国人観光客を呼び込むために、市や地元経済団体が中心になって名物の餃子をさらに売り出そうと企画しています。たしかに宇都宮は餃子が有名ですし、それだけの名物に育ててきた地元の努力はすばらしいことです。ただ、海外の人向けと考えたときに、もっと新しいものを考えてもいいのかもしれません。今あるものも大事にしながら、過去の成功体験にとらわれすぎずに新しい魅力を生み出すことができるかどうか。それが問われるのが地方創生だと私は考えています。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/list/201910/CK2019100602000162.html
――ですが、そのマインドセットの変更がいちばん難しそうですね……。どうしても「一足飛びに解決できる手法が何かあるのでは!?」と夢見てしまいます。
小笠原 一気にすべてがうまくいって景気が良くなるというような未来はありません。でも、だからといって「もうダメだ」と一気に悲観的になる必要もない。前述の宇都宮でも実際に新しい取り組みが若い世代から生まれてきていて、今後の展開が楽しみなところです。
ではこの現状の中でどうやって淡々と生きていくのか、そのための方法を次回以降考えていきたいと思います。
小笠原伸(おがさわら・しん)
1971年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻建築学専修修士課程修了。2012年より白鴎大学着任。現在は同大学経営学部教授、白鴎大学ビジネス開発研究所所長を務める。都市戦略研究、地域産業振興、ソーシャルデザインなどを専門とし、国土形成計画や地域活性化・地方創生の現場に携わる。現在、茨城県結城市、栃木県小山市などへの助言指導を行っている。
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