コンビニ商品のプロが人脈を駆使して本を売ってみたら、出版不況の現実が暴かれた!?
#インタビュー #コンビニ
“コンビニのプロ”渡辺氏がとった驚きの行動とは?
ただ、渡辺氏がすごいのはここからだ。
(2)(3)を実現するために、自ら営業を行ったのである。
「今、最初から欲しいタイトルが決まっている場合、Amazonで購入することが増えていますよね。書店で本を購入するのは、『何か面白い本がないかな?』と出会いを求めて足を運んだ場合です。でも、1~3冊しか入荷いただけなかった書店では、新刊と言えど棚差しになってしまう可能性が高い。つまり、見つかりにくくなってしまうんです。
商品を効率よく売るためには当然、返品率を下げる必要があります。ならば、大量に入荷していただき、一等地に平置きしてもらったり面陳してもらったりして目立つように売ってもらったほうが、返品率は下がるはずです。そこで、自ら書店に足を運び、100冊、200冊規模で仕入れてくれる書店を見つけました」(同)
さらに氏は大手出版取次のひとつ、日本出版販売株式会社(以下、日販)にも自ら向かった。
「全国の書店に確実に流通するためには、取次の采配が重要です。ただ、本の発売となった12月26日は年内最後の書店搬入日でもありました。年末は書店で本が売れる時期でもある。当然、大手出版社もこの日までに本を出したいと考える。希望する搬入数を得るためには、取次の方に直接アプローチし、出版社とともに本書の特徴をしっかり説明する必要があると考えたのです。このミーティングのおかげで、取次よりありがたいアドバイスをいただき、配本の明確なビジョンを描けるようになりました」(同)
著者自ら、Amazonの予約販売の推進を行い、書店へ営業に行き、取次へ交渉に向かう。しかも、発売後には渡辺氏が店頭に立ち、自著の「推奨販売」まで行っているという。
「私はこれまで730品以上の商品開発に携わってきました。本を作ることは初めてでしたが、本も商品であることに変わりはありません。『本が売れない』と言われて久しいですが、ならば売れるようにマーケティングして、売れる本を作ればいい。売る戦略をきちんと立てればいい。書籍の装丁も、書店の担当者に聞き取りをして、今売れ筋本の動向を調査して作りました。結果がどう出るか、楽しみですね」(同)
発売から3週間がたち(記事執筆時)、『コンビニが日本から消えたなら』の売り上げは今、(1)Amazonが25%の実売率、(2)大規模展開書店が40%の実売率、(3)通常配本の書店が20%の実売率となっている。
「書店の店頭に立ってみると、化粧品を販売するのとは違う。大量陳列だけでは手に取って買ってもらえない……書籍の販売は、バラエティストアやドラッグストアとは全く違うということがわかりました。目的の商品そのものとかビジネス書や小説など目的のジャンル・カテゴリーを定めて商品を購入する、”目的購買”が書店での消費者行動の大枠だということが、自分でやってみてやっと感じられました。これからも、メディアでの本の告知、ツイッターを中心とした特定ターゲットへのアプローチ、コンビニでの販売など、引き続きマーケティングを実施していきたいと思っています 」
●渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
マーケティングアナリスト。1967年生まれ、静岡県浜松市出身。コンビニエンスストアの店長、スーパーバイザー、バイヤーとして22年間、メーカーのマーケッターとして7年間従事。現(株)やらまいかマーケティング代表。商品開発730品の経験を活かし、顧問、講演、バラエティから報道までのメディア出演と幅広く活動。フジテレビ『Live News α』のレギュラーコメンテーター。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事