「一生消えない心の傷を負わせた」ラッパー・Pablo Blastaがアウトロー時代を包み隠さず歌う理由
#インタビュー #ヒップホップ #アウトロー #ラッパー #Pablo Blasta
XXXテンタシオンの強さと弱さが魅力的
ーー同世代で共感するラッパーはいますか?
「XXXテンタシオン(米フロリダ州出身のラッパー。17歳でデビューし、過激かつ内省的な楽曲でカリスマ的な人気を得たが、18年に強盗に射殺された。享年20歳)かな。俺の周りではタフなヒップホップが好きなヤツらが多いからあんまり人気ないけど、作品から醸し出されるテンタシオンの人間性にすごく共感してますね。あの人、実はすごく暴力的な人間だったんですよ。じゃあなんで、自分の弱い、情けない面をとことん突き詰めて表現したのか。それはヤツが自分のラップで世の中を良くしたいと考えたからだと思ってるんです。暴力的な人間だったからこそ、暴力の持つ本質的な悲しさを知ってた。そういう世の中の汚い面をちゃんと見せることによって、逆説的に世の中を良くしようとしてたんだと思う。
俺自身、これまで本当に取り返しのつかないことをたくさんしてきました。ある人には一生消えない心の傷を負わせたし、俺自身もそういうものを負わされた。正直、今は世の中からそういうことがなくなればいいと思ってる。でも、『みんなで仲良くやろうよ』ってメッセージじゃ、誰の心にも響かない。それより、俺が経験した本当に嫌な体験を包み隠さずラップすることで、『こんなの嫌だろ?』『だったら、みんな本質的に変わっていこうよ』って感じてもらいたいんですよね。そのレベルの表現は、まだ全然できてないんですけど(笑)」
ーーPablo BlastaさんがXXXテンタシオンに共感しているのは意外でした。
「強さと弱さを同時に感じさせるところが、すごく魅力的なんですよね。聞くところによると、テンタシオンは射殺されたとき、強盗に自分のバッグを渡さなかったらしいんです。相当気合い入ってる人でも、普通は『バッグなんか持ってけ』ってなる。でも、テンタシオンは動じなかった。そういう強さを持ってる人だったんです。日本のギャングぶったラッパーが『テンタシオン、ダサい』とか言うのはお門違いだと思う」
ーー日本で注目しているラッパーはいますか?
「森将三かな。曲はもちろん、ライヴもヤバい。あいつの後には絶対にやりたくないってくらい、人を惹きつける力を持ってる。けど、全然人気ないんですよ。そもそも知ってる人がほとんどいない。あと、BLACK BASSやBBY NABEもカッコいいと思うけど、YouTubeの再生回数は少ない。それがショックだったんですよね。『こんなカッコいいのになんで人気ないんだろう』って。逆に「この程度のラップで、なんでこんな再生されるの?』みたいなヤツが多い。そこは、自分なりにいろいろ考えました。人気ある人の曲も聴いたし、ライヴも観に行った。けど、どっちもそこまで良くない。じゃあ何が違うかといえば、見栄えやツイッターやインスタのフォロアー数なんですよね。そこに気づいたときは、かなり愕然としました。『結局、そこか』って。だから、最近はシーンを意識するのをやめました。その時々で自分が伝えたいことをしっかりラップしようって、それだけ考えてます」
ーーということは、『Synapse』は最近のPablo Blastaさんの気持ちが反映された作品ということですか?
「いや、『Synapse』は実は結構前に作ったアルバムなんです。いろいろあって出せなかったんですよ。今までの俺はそういうのが多かったんです。『Native PB』も作ってから世に出すまで1年くらいかかってるし。でも、そういう状況もようやく整理されてきた。これからは自分のバイブスをタイムリーに作品として出したい。実は今もEPを作ってます。自分的にはいい感触ですね。次の作品から名前を“Yomi”に変えてリリースしていくつもりなんです」
ーー次の作品も楽しみですね。では最後に、今後どのように活動していきたいかを教えてください。
「国とかジャンルにとらわれない表現をしたいかな。世界から見たら、日本も、日本のヒップホップ・シーンも相当ちっちゃい村だと思う。だから、とらわれずに自由にやりたい。あと俺、すごい飽き性なんです。『Synapse』ももう飽きちゃってる。今後の目標としては、もっと普遍的な魅力を持った作品を作れるようになりたいですね。そこは本当に自分の課題だと思っています」
ーーそのために必要なことはなんだと思いますか?
「いっぱい作って、継続的に曲を出し続けることだと思います。あと、ライヴも。俺の活動のメインは制作だけど、ライヴは得るものが大きい。お客さんからいい反応があると、こっちのパフォーマンスもどんどん良くなる。ちょっと前にAbema TVの『Weekend Bomb』って番組に呼んでもらえたんですけど、俺の出番はANARCHYさんの後だったんですよ。なかなかハードルが高いなって思ったけど、結構がっつり盛り上げられた。しかも、俺はクルーとかじゃないから、自分ひとりでANARCHYさんの後にやれたっていうのは本当にデカい経験。自信になりました。そういういい流れを作品につなげていきたいですね」
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