安倍政権が考える“日本人の幸福”は金次第!? 経済統計ではみえない、本当の満足度とは?
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内閣府による「満足感」は、その多くが経済統計という問題点
さて、内閣府が検討を進めているのは、「満足度・生活の質を表す指標群(ダッシュボード)」なるもの。安倍内閣による骨太方針2019で『我が国の経済社会の構造を人々の満足度の観点から見える化する「満足度・生活の質を表す指標群(ダッシュボード)」の構築を進め、関連する指標を各分野のKPIに盛り込む』こととされた。KPI(Key Performance Indicator)とは、目標の達成度合いを計るために継続的に計測・監視される定量的な指標を指す。
これを受け、内閣府ではOECD による先行事例の分類をベースとして、①家計と資産②雇用環境と賃金③住宅④仕事と生活(ワークライフバランス)⑤健康状態⑥教育水準・教育環境⑦交友関係やコミュニティなど社会とのつながり⑧生活を取り巻く空気や水などの自然環境⑨身の回りの安全⑩子育てのしやすさ⑪介護のしやすさ・されやすさ―の11分野を候補にしている。
この11分野に関連する統計を用いて指数化することで、日本国民の「満足度」を測ろうというものだ。例えば、①の家計と資産では、総務省「家計調査」から「一世帯あたりの可処分所得金額の推移」と、日本銀行の「家計の金融行動に関する世論調査」から「一世帯あたりの金融資産残高の推移」、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」から「生涯賃金の推移」を指数算出のための母数とする。
③の住宅では、総務省の「住宅・土地統計調査」から「一住宅あたり延床面積の推移」、「1人あたりの居住室面積の推移」、総務省の「全国消費実態調査」から「家賃地代(民間借家・借間に住む二人以上の世帯)の推移」、「住宅保有率の推移」を、⑤健康状態では、厚生労働省の「簡易生命表」等から「平均寿命・健康寿命の推移」、「国民健康・栄養調査」から「糖尿病が強く疑われる者の割合の推移」、「運動習慣がある者の割合の推移」を、⑦の社会とのつながりでは、総務省の「社会生活基本調査」から「ボランティア行動者率の推移」、NPO法人ファンドレイジング協会の「寄付白書」から「個人寄付総額の推移」、総務省の「社会生活基本調査」から「交際・付き合いの時間の推移」を指数算出のための母数としている。
例えば、国連などではGDPという経済面での豊かさでは捉えられない「幸福」を把握する試みとして「幸福度」指数を作成している。
米国の世論調査会社が2015年に行った世界68カ国の幸福度調査では、「幸せ」と答えた人から「不幸せ」と答えた人の比率を差し引く方法で「幸福度」を算出した。この結果、幸福度の経済的に発展している先進国の幸福度の平均は40%程度だったが、コロンビアやベトナムといったGDPが低く、経済面では豊ではない国でも、幸福度は80%以上となった。経済的な豊かさだけが、必ずしも国民の幸福感につながるものではないという証しでもあろう。
一方で内閣府が検討している「満足感」の指標は、既存の統計を母数にし、その多くは経済統計だ。政治の責任は、“国民を幸福にする”ことにある。「満足する」ことと「幸福を感じる」ことがイコールではないとすれば、「満足感」を政策目標にするのではなく、「幸福度の向上」を政策目標とするべきではないだろうか。
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