東出昌大・唐田えりかの不倫報道で再注目! 『寝ても覚めても』ビッチ=自分に正直に生きる女?
#映画 #東出昌大 #唐田えりか #寝ても覚めても
石橋静河がビッチに……『きみの鳥はうたえる』
41歳の若さで亡くなった函館出身の作家・佐藤泰志は多くの映画人たちに愛され、熊切和嘉監督『海炭市叙景』(12)、呉美保監督『そこのみにて光輝く』(14)、山下敦弘監督『オーバー・フェンス』(16)と映画化されてきた。そして初期代表作である『きみの鳥はうたえる』が、北海道出身の若手監督・三宅唱によって映画化された。『きみの鳥はうたえる』のヒロイン・佐知子もとても印象に残るビッチな女性だ。
函館の書店に勤める佐知子(石橋静河)は店長(萩原聖人)と不倫関係にありながら、店をちょくちょく無断欠勤する僕(柄本佑)と付き合い始める。僕が暮らすアパートの二段ベッドで、昼間からSEXに興じる僕と佐知子。その部屋は失業中の静雄(染谷将太)とルームシェアしており、やがて僕と佐知子と静雄は3人で毎晩のように酒を飲み歩くようになっていく。夏の短い北海道の過ぎ去りゆく季節と若さを惜しむかのように、3人は夜通しで遊びほうける。
暴力衝動が抑え切れない僕と家族の問題を抱える静雄との間を、気ままな猫のようにふらふらと行き来する佐知子。気に入った男を見つけると、放っておけないビッチ気質の女性である。演じる石橋静河は、池松壮亮とダブル主演した『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(17)ではずっと固い表情だったが、今回は一転してリラックスした自然な笑顔を見せ、ロケ地の函館に溶け込んでいる。柄本佑、染谷将太と一緒に過ごすのが本当に楽しそうだ。母親が原田美枝子、父親が石橋凌なだけに、スクリーン映えする顔立ちをしており、これからますます映画界で活躍するに違いない。また、原作からドラマチックな部分を削ぎ落とすことで、主人公たち3人のユートピア的な世界を浮かび上がらせた三宅監督の演出も特筆したい。
世界的に著名で、時間を経ても色褪せることのないビッチなヒロインといえば、米国の人気作家トルーマン・カポーティーが1958年に発表した小説『ティファニーで朝食を』に登場したホリー・ゴライトリーだろう。「ただいま旅行中」と記した名刺を持つホリー・ゴライトリーは、駆け出しのモデル兼女優で、親切な紳士たちからお小遣いをいただきながら浮き草生活を送っている。言ってみれば、ビッチさを生業にしている女性である。
オードリー・ヘップバーンが主演した映画『ティファニーで朝食を』(61)のほうが原作小説よりも遥かに知られることになったが、映画を観たカポーティーが怒ったのは有名なエピソードだ。小説版のホリー・ゴライトリーは能天気そうに見えて、こだわりがあった。「自分に不正直な女になるくらいなら、病気でくたばったほうがずっとましだわ」と小説の中のホリー・ゴライトリーは主張する。狩猟民族のように旅を続け、自由に生きる気高さこそが、ホリー・ゴライトリーの魅力だった。映画版ではその自由な気高さは見事なまでに否定されている。タイトルと設定を借りて、作品の根底に流れるものを無視した映画版に、カポーティーが腹を立てたのも当然だろう。
自分に正直に生きると、周囲の人々だけでなく、自分自身もボロボロに傷つけることになる。誰にでも容易に予測できることだ。それでもビッチと呼ばれる女性は、自分が本当に欲しいと願ったものに手を伸ばす。ボロボロに傷つくことを恐れない。野生の本能に忠実に生きるビッチほど、残酷で美しい生き物は存在しない。ビッチとは、自分に正直に生きる女に与えられた尊称である。
『寝ても覚めても』
原作/柴崎友香 脚本/田中幸子、濱口竜介 監督/濱口竜介
出演/東出昌大、唐田えりか、瀬戸康史、山下リオ、伊藤莉沙、渡辺大知、仲本工事、田中美佐子
配給/ビターズ・エンド、エレファントハウス
C)2018「寝ても覚めても」製作委員会/COMME DES CINEMAS
『きみの鳥はうたえる』
原作/佐藤泰志 脚本・監督/三宅唱
出演/柄本佑、石橋静河、染谷将太、足立智充、山本亜依、柴田貴哉、水間ロン、OMSB、Hi’Spec、渡辺真紀子、萩原聖人
配給/コピアポア・フィルム、函館シネマアイリス
C)HAKODATE CINEMA IRIS
http://kiminotori.com
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