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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 元日に死んだ赤ちゃんとこの社会
エッジ・オブ・小市民【7】

2020年1月1日に死んだ小さな赤ちゃんと、この社会

社会の“空気”に抗うために

 “シングルマザーの貧困”なんて、自分には関係ない。そういう人も多いだろう。しかし、これは自分がどういう社会に住みたいのか、そしてどういう人間でありたいのか。そういうレベルの問題だ。自宅の浴室でたったひとりで赤ちゃんを出産した女性が、生活のために翌日から働きに出て、産んだばかりの赤ちゃんが死に、逮捕されるような社会を是とするのか? 

 制度やシステム、教育はそう簡単に変わらないだろう。女性を妊娠させて逃げる男にも絶滅してもらいたいが、きっとこれからもそういう男は絶えることなく存在し続ける。しかし、少なくても自分自身の意識と態度は変えられる。社会、あるいは世間の道徳的な判断は、実は自分の周りの“空気”に依存しているところが非常に大きいという。つまり、自分の意識と態度を変えることは、そんな空気を変える第一歩になりうる。だから、どうか冷笑的にならないでほしい。苦しい境遇にいる人や不幸な事件に接したときに感じた胸の痛みを大切にして、「どうしてこんなことが起きてしまうのか」と考え、思いを馳せてほしい。そして、もし隣人が困窮していることがわかったら、声をかけてみよう。

 2020年の1月1日に小さな赤ちゃんが死んだ。それはもうすでに過ぎ去った事件のひとつで、やがて忘れられるだろう。しかし、逮捕された足立区の母親と同じようなギリギリの薄氷の上を歩いている人は、今も数多くいるはずだ。彼女たちの存在は誰にも見えないまま、いつしか氷は割れる。その割れた穴は数多の人々を飲み込むほど、大きく広がっていく。それが私たちの生きている社会だ。

いくつかのペンネームでウェブ・雑誌記事を書いている雑文業。得意分野は特になく、「広く浅く」がモットー。

ほったこう

最終更新:2023/03/23 19:04
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