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週刊誌スクープ大賞

国を挙げてのゴーン追い落とし!? 日産幹部、官邸や官僚、検察はこの落とし前をどうつけるのか

 今週の第1位は、まんまと検察の手から逃れ、レバノンへ渡り、日本の司法のおかしさや、人権を無視したやり方を、レバノンから告発するカルロス・ゴーン関連の記事に捧げたい。

 さて、1月8日、レバノンに逃亡したゴーンが会見した。

 2時間半にわたるゴーンのワンマン会見を、あまり上手ではない同時通訳にイライラしながらテレビ東京とAbemaTVで見た。

 感想はひと言「がっかりした」。推定有罪、自白強要、人質司法、長すぎる公判など、日本の司法制度のおかしさを批判するのはいい。日本人の多くもそう思っている。

 日本から逃亡したやり方を明らかにできないのも理解できる。だが、肝心な、彼の身の潔白を証明する決定的な「証拠」は出してこなかった。

 ゴーンが「仕組まれた」というこの事件の構図は、簡単にいうとこうだ。ルノーに吸収されることを怖れた日産幹部たちが、日本の政治家・検察と手を組み、この計画を潰そうとして起こしたクーデターだというのである。

 日産の人間の実名は出したが、政治家の名前は、レバノン政府と日本政府との関係があるからいえないという。この期に及んで、肝心なところをうやむやにするのでは、何のための会見だったのか。

 確固たる裏付けのないまま、自分は無罪だと百万遍繰り返しても、聞く側の心には響かない。名前を挙げた川口均専務執行役員(当時)が菅官房長官と親しかったのは周知の事実である。菅は川口に頼まれて何らかの動きをした可能性があることを、ゴーンは知らなかったのだろうか。

 そうした「ゴーンしか知らない事実」を会見でぶちまけると思っていたのだが、何もなかった。

 新潮によれば、ゴーンの逃亡劇には元グリーンベレーが関わっていたが、日本人、それも芸能事務所の関係者が、ゴーンが品川から新幹線に乗り関空に至るまで、接触していたと報じている。この人間は何者なのか、知りたいものである。

 ゴーンの限定記者会見に入れた日本のメディアは、テレビ東京、朝日新聞、小学館『週刊ポスト』『NEWSポストセブン』合同取材班だった。

 テレ東と朝日は何となくわかるが、なぜ、ポストとセブンだったのか。小学館の合同取材班の記者がゴーンに、なぜ4社だけなのかを問うた。

 それに対してゴーンは「日本のメディアを差別したわけではない」と前置きしてこう答えたそうだ。

「あなたが参加できているのは、客観的な見方ができる方と判断されたからです。正直に言って、プロパガンダを持って発言する人たちは私にとってプラスにならない」

 自分を批判するメディアを、プロパガンダだと一括りにして切り捨ててしまう。まだ、独裁者だったころの“性根”を残こしているようでは、ゴーン信者はいいだろうが、多くの支持者を得ることは難しいだろう。

 フライデーは、ゴーンの日本からの逃亡をほう助した「民間警備会社」の実態を取材している。

 こうした会社は欧米に20社ぐらいあり、有名なのはイラク戦争時に民間人を殺害して悪名を馳せた『ブラックウォーター』(現在は『アカデミ』)と、世界最大規模の英国に本社を置く『G4S』で、90か国に54万人以上の人間を抱えていると、自衛隊初の特殊部隊『特別警備隊』の創設にも関わった伊藤佑靖が話す。

 彼らは「軍隊が任務に専念するための周辺業務を行う」。後方での食料補給や基地警備などだが、戦闘に巻き込まれて死亡しても、軍人が死亡した場合のように国家は何も責任を負う必要がないため、都合のいい存在だという。

 特殊部隊にいた経験を持つ者もいる。彼らは、何でも自分でできるし、ナイフや素手での格闘能力も高いから、1日1000ドル以上の給料をもらうそうだ。

 今回のゴーン逃亡作戦を担った民間の警備会社は、一つ一つは素人でもできることだが、誰がやっても失敗しない作戦を立て実行したのはすごいと、伊藤は高く評価している。

 ゴーンの会見を評価するのかしないのか、意見は分かれるようだが、週刊朝日は、ややゴーン側に傾いているようだ。ゴーンのいう日本の司法のおかしさは、世界からも厳しい眼で見られているという。

 それに加えて、元特捜部検事の郷原信郎は、「日産経営陣と経産省と検察が結託し、カリスマ経営者を葬ろうとしていたと国際的には見られているのです。日本の刑事司法に対する批判が高まるなか、ゴーン被告の主張に反論するのは簡単ではありません」

 また、検察は、ゴーンが会見を開く前日に、妻キャロルを偽証容疑で逮捕状を取ったのも、見え見えで、日本の検察のやり方に批判が出るのも無理はないという。

 日本政府は、ゴーンの身柄引き渡しを求めていくが、犯人引き渡しの条約は、韓国としか結べていない。

 アメリカは100か国以上と結んでいるのに。その背景には、日本にはまだ死刑制度があることも要因だといわれているそうだ。

 ようやく今になって、プライベートジェットに大型荷物を持ち込む際にも、保安検査を義務付けることをいい出したが、後の祭りである。

 ゴーンの逃亡、会見で、日産の評判は地に落ちつつある。このままでは、ルノーでさえも、一緒になるのは御免被るということにもなりかねない。

 日産幹部、官邸の政治家や官僚、検察は、この落とし前をどうつけるのか。そのうち、日産内部から、今回のクーデターの一部始終を話す人間が必ず出て来る。

 国を挙げてのゴーン追い落としの陰謀が、日産倒産だけに終わらないかもしれない。事件は振出しに戻り、この事件の行く先も不透明である。(文中敬称略)

元木昌彦(編集者)

「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"。

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もときまさひこ

最終更新:2020/01/14 21:00
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