政府の諜報機関、サイバー軍、民間企業の連携…サイバーセキュリティという国防
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英才教育が施されるイスラエルの若者
そんなアメリカも、サイバー攻撃の一方的な“被害者”というわけではない。むしろ、国家が主導するサイバー攻撃の端緒を開いたのは、アメリカによるイランに対するサイバー攻撃だった。
10年、イランの核燃料施設が、のちに「スタックスネット」と呼ばれることになるコンピュータワームによって、突如として機能不全に陥った。その影響を受けて、イランは秘密裏に開発していた核兵器の製造を数年先延ばしにすることを余儀なくされた。そして12年、ニューヨーク・タイムズ紙が、このワームを作成したのがNSAとイスラエルの諜報機関であることを突き止め、大々的に報道。イランの核開発を遅らせるためにアメリカとイスラエルが共同して仕掛けた、国家が主導するサイバー攻撃だったというのだ。
無論、両国の政府はこれを否定。しかし、政府高官の非公式の談話や、元NSA職員の告白などから、それはもはや“公然の秘密”として世界の国々に周知されているという。
ここでその名前が登場したイスラエルといえば、諜報特務庁の通称「モサド」が世界的に有名だが、サイバー分野においても、世界有数の技術を持っているという。各国のサイバーセキュリティ事情に詳しい国際ジャーナリストで、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)などの著書もある山田敏弘氏は、こう述べる。
「ご存じのように、イスラエルという国は過去に戦火を交えたアラブ諸国――いわば敵に囲まれているわけです。そういった地政学的な要因から、建国以来、諜報活動も含めた国防は生命線であり、そこに人材や予算を惜しみなく投入してきた。それはサイバー分野に関しても同様。イスラエル国民は18歳になると、男性は3年、女性は2年の兵役に就くのですが、その段階で全員の特性を徹底的に調べるんです。とりわけ数学能力の高い人は全員、スタックスネットを開発したイスラエルのサイバー部隊『8200部隊』に投入し、海外に留学させるなどサイバー関連の英才教育を施します」
だが、話はここで終わらない。
「彼らが兵役を終えると、国が出資してサイバー分野のスタートアップをやらせたりします。そして、そこで開発された技術を、今度はアメリカなど国外に売ります。実際、イスラエルのサイバーセキュリティ企業は非常に技術力が高く、日本の企業や捜査機関にもかなり導入されていますね。このように、官民学が一体となったエコシステムが、完全に出来上がっているんです」(山田氏)
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