普通のひとり暮らしには地方でも時給1500円以上必要、30代夫婦で子ども2人なら「月額48万6913円以上」
最低賃金を1500円以上に引き上げるべきだという調査結果が、全国で発表されている。
昨年12月、佐賀県労働組合総連合は「佐賀県で若者が普通に暮らすためには時給“1600円”以上が必要」との調査結果をまとめた。
佐賀県労連は、佐賀県内で働く労働者約800人に住居、家具、食費といったアンケート調査を実施。そこから、ひとり暮らしをする10代から30代の男女111人の回答や国の統計から、1カ月にかかる生活費を分析した。
そのような分析を経て、佐賀県で家賃3万4500円のワンルームマンションで中古の軽自動車を所有している条件で計算したところ、男性は24万1972円、女性は24万2732円必要なことがわかった。
時給に換算すると、法定労働時間の173.8時間の場合、男性は1392円、女性は1397円だ。
佐賀県労連は、最低賃金を全国一律で1500円以上に引き上げる必要があると主張している。
京都府は「時給1500円以上」、東京都「1700円以上」
昨年5月には、京都地方労働組合総評議会も単身者の最低生計費試算調査を発表している。結論から言うと、こちらも「最低賃金を全国一律で 1500 円に上げるべし」という結果だ。
京都総評では、2018年の10月からアンケート調査をはじめ、生活実態や京都市の価格調査をもとに、生活費や居住費、医療費、娯楽といった生活費を計算。
その結果、月150時間労働の単身・25歳の場合、男性は月額24万5785円、時給換算すると1639円、女性は24万2735円、時給換算すると1618円が必要だとわかった。
なおこの調査では、衣料品、シャンプーや洗顔フォーム、化粧品といった理美容品の価格や、食費は1日に必要なカロリーまで事細かに算出しているが、けっして“贅沢な生活”とは言えない。
京都総評では「子育て世帯(30代から50代)」での最低生計費試算調査も発表しているが、30代夫婦で子ども2人家族の場合は、「月額48万6913円以上」必要という結果であった。
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また、東京都での最低生計費調査結果も昨年12月に発表されている。
東京地評と東京春闘共闘会議の3238人分のデータをもとにした調査によると、新宿、世田谷、北の3区に住む月150時間労働の25歳単身者を想定した場合、月額24万6362円から26万5786円が必要だという。時給に換算すると時給1642円から1772円になる。
東京都は他県よりも家賃の負担は重いが、調査を監修した中澤秀一静岡県立短大准教授によると、「東京と他県の最低生計費の格差は最賃ほど大きくない」そうだ。
青森などで最低賃金は790円
全国的に“普通”の生活をおくるためには、時給1500円以上が必要という調査結果が出ているが、現状はどうなっているのだろうか。
昨年10月に全国で最低賃金の引き上げがされたものの、東京都は1013円、もっとも低い県(青森県、岩手県、愛知県、高知県、佐賀県、長崎県、沖縄県など)は790円だ。全国加重平均額(重みを加味した平均)は901円にとどまっている。
厚生労働省:令和元年度地域別最低賃金改定状況
2017年7月に閣議決定した「働き方改革実行計画」には、年率3%程度を目途として最低賃金を引き上げ、全国加重平均1000円を目指すと明記。実際に昨年10月には全国平均901円に引き上げられた。
一方でこの政策には中小企業の経営者から反対の声もあり、日本商工会議所など中小企業3団体は昨年5月、最低賃金引上げを進める政府に対して、緊急要望を提出。
それによれば近年、最低賃金の大幅な引き上げにより、直接的な影響を受ける中小企業が増加しており、不安を訴える声が増加しているという。
日本商工会議所など中小企業3団体は、「中小企業の経営実態を考慮せず、政府が3%を上回る引上げ目標を掲げることに強く反対」「政府は強制力のある最低賃金の引上げを政策的に用いるべきではなく、中小企業が自発的に賃上げできる環境を整備すべき」と表明している。
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賃上げしても中小企業の倒産が相次げば景気は回復しない。だが低賃金のまま労働者の雇用を守っていても未来があるとは言えないだろう。
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