『きのう何食べた?』待望の正月SP! 3万円の傘と食費の残金23円の価値
#きのう何食べた?
昨年春に深夜帯ながら話題を呼んだドラマの続編である『きのう何食べた? 正月スペシャル2020』(テレビ東京系)が元日に放送された。
まず、筧史朗(西島秀俊、以下「シロさん」)と矢吹賢二(内野聖陽、以下「ケンジ」)の日常を切り取ったオープニングを今回もそのまま使ってくれたことが地味にうれしい。久々に幸せな気分になった。
シロさんの罪悪感と不安を消したケンジの一言
今回の正月SPは1時間半を3章に分けた章仕立ての構成。第1章のテーマは「親子関係」だった。
いきなり初っぱなに、シロさんが昔から憧れていた女優・三谷まみが登場する。三谷を演じているのは宮沢りえだ。10代の頃の宮沢といったら、それはもう神懸かり的なかわいらしさだった。そういう意味で「シロさんが昔から憧れていた女優」として納得のキャスティングである。三谷はドラマで母親役を演じたばかりだった。
「あの役やってて、とっても楽しかったから。まあ、ちょっと複雑なお母さんでしたけどね」(三谷)
“複雑な母親”を語る宮沢にジンとくる。ここから、1章は1本の縦軸に沿って進行していった。
父・悟朗(田山涼成)の通院で生活に困った両親から「保険金が下りるまでお金を貸してほしい」とシロさんに連絡が入った。かつて、母・久栄(梶芽衣子)はシロさんのセクシャリティが受け入れられず、壺を買うなど大金を新興宗教につぎ込んだ過去があった。つまり、「実家にお金がないのは自分のせい」という罪悪感にシロさんはさいなまれている。さらに、パートナーは金銭感覚がルーズなケンジだ。親に仕送りはしたいし、自分たちの老後資金も心配。そんなシロさんに染みたのは富永佳代子(田中美佐子)の言葉だった。
「筧さんが今こんなに立派になったのは、もしかしたらその壺のおかげかもしれないじゃない?」
これ、原作にはないセリフなのだ。安達奈緒子の脚本が本当にいい。ものすごく救われる一言だった。
さらに、ケンジはシロさんに言った。
「無駄遣いばっかしてる俺が言うのもなんなんだけどさ、俺、お金ってさあ、大切な人のために使うんなら価値は何倍にもなると思うんだよね」
母を新興宗教に入信させた罪悪感、親に仕送りすることの不安、どちらをも溶解させる一言だったと思う。
ケンジはシロさんの誕生日に1本3万円もする傘をプレゼントした。シロさんが1カ月の上限にしている食費(2万5,000円)よりも高い! 値段を知り、一瞬怒りかけたシロさんだったが、雨空を見て傘を差すときは結局、ニッコリしていた。お金も時間も大切なのは誰のために使うかである。
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