東京五輪、外国人労働者、フェミニズム……令和元年のドキュメンタリーは何を描いた?
#ドキュメンタリー
外国人留学生、労働者、そして不法滞在者
外国人留学生、労働者、不法滞在者についてのドキュメンタリーは、昨年最も多かったジャンルではないだろうか。
19年前半の時点で、外国からの留学生は30万人。彼らは週に28時間以内の労働が認められており、その職種は問われない。それにより、彼らは今の日本の労働力不足を補う役割を担わされている。
6月に放送のNNNドキュメント『ニッポンで働く 外国人労働者”共生”の覚悟は…』(同)では、農場の雇用主が「彼らがいなくなったら、この野菜や農産物は、今の価格では供給できませんし」と語り、また別の経営者は、「こっちが(外国人労働者を)選んでるように見えるけど、来る時点で選ばれている」という事実を認識していた。
また、テレメンタリー2019『便利の裏側で~深夜3時の留学生~』(テレビ朝日系)に出てくる某コンビニの労務担当者は、「(もし留学生がいなくなったら)人員不足倒産ですね」「ほとんどの会社が倒産してしまうんじゃないか」「便利を求めたり、24時間買い物ができることを当たり前だと思う感覚を見直したほうがいいところまで来てるのかなと思います」と語る。
自覚がある経営者、担当者はまだ良心的だが、そんな人たちばかりではない。6月放送のクローズアップ現代+『留学生が“学べない” 30万人計画の陰で』(NHK)では、留学生がバイトに追われ、せっかく日本に学びに来たというのに日本語学習もままならず、その後、研究生として受け入れられた大学でも、まともな学びが得られず、1600人の学生が行方不明になった事実を追っていた。
留学生だけでなく、外国人労働者ひとりひとりの顔すら見ずに、体よく使っている人たちも存在する。NHKで6月に放送された『ノーナレ 画面の向こうから―』には、ベトナムから夢を抱いてやってきた技能実習生の現実に迫る。番組の中では、「法務省は、去年までの8年間で174人の技能実習生が死亡していたことを明らかにしました」というニュースのナレーションが流れる。
こんな状況下でも、政府は今後5年間でさらに34万人の外国人労働者を受け入れることを予定している。いわゆる“骨太の方針”というもののひとつだ。
その裏には、働きたくても働けないクルド人などの「不法滞在者」の存在もある。3月放送のテレメンタリー2019『ラマザンの壁 ~クルド“難民”の生きる場所』(テレビ朝日系/https://abema.tv/video/episode/89-78_s10_p23)には、義務教育を終え、働くことはできないが、「いつか日本のためになりたい」と語学を学び、通訳として働きたいという“夢”を追うクルド人のラマザンさんが登場する。彼は、“骨太の方針”の発表を知って、労働力不足が叫ばれている現在でもなお、自分たちのようなクルド人の不法滞在者は、労働力としてすら認められないことを嘆く。
彼らのような不法滞在者は、数カ月に一度、入国管理局に出頭し許可を得ないといけない。長崎県の大村入国管理センターで、収容中の40代のナイジェリア人男性が死亡したというニュースも記憶に新しいが、今後もこうした問題を扱ったドキュメンタリーは作られ続けるだろう。問題をあぶり出すことも必要だが、少しでも状況が良くなったことが伝えられる場になってほしいと願わずにはいられない。
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