東京五輪、外国人労働者、フェミニズム……令和元年のドキュメンタリーは何を描いた?
#ドキュメンタリー
ジェンダー・フェミニズムの番組も登場
一昨年まではほとんどなかったが、昨年に入って見られるようになったのが、ジェンダー・フェミニズムの話題を扱った番組である。
まず6月には、TBSの『情熱大陸』にて、社会学者であり日本における女性学・ジェンダー研究の第一人者である上野千鶴子が取り上げられた。今年の東京大学での祝辞の場面が冒頭に使われ、主に上野の活動を追う。簡易宿泊所で行われている訪問医療の現場を訪れた際に「社会学者は他人に興味がある人間」「家族のようなって言い方に抵抗がある」「日本には家族の呪縛がその辺にあるから」と言っていたのが印象的だった。番組の性質上なのか、「怖いものはなんですか?」と聞いたり「ニックネームはチコちゃん」とナレーションで入れたりと、なにかとかわいい面もあるとギャップを見せようとしている感もあるにはあったが、普段こうした考え方に触れない人にもフェミニズムが届くきっかけに少しはなっていたのではないか。
一方、昨年ヒットした韓国の小説『82年生まれ、キム・ジヨン』に触発されて作られたドキュメンタリー、『目撃!にっぽん―「キム・ジヨンと女性たち~韓国小説からの問いかけ~」』(https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2019097768SA000/)と『ストーリーズ 彼女たちの中のキム・ジヨン-韓国小説からの問いかけ』(共にNHK)という2番組も放送された。
同じ素材を使って2番組にまとめられていたものだが、両番組ともに、キム・ジヨンに共鳴し、現在の自身の生きづらさに対して声を上げ、変わろうとしている女性たちを追う。特に「ストーリーズ」のバージョンでは、松坂桃李がナレーションを担当し、現在の女性の境遇についての語りがあることで、より伝わりやすくなっていたと感じる。
こうした企画は昨年まではなかなか見られなかったが、ドキュメンタリーのテーマとして選ばれるということは、フェミニズムが徐々に浸透していることのひとつの表れであるとも思える。
一方、10月には、NNNドキュメント『なかったことに、したかった。未成年の性被害(1)』『なかったことに、できない。 性被害(2) 回復への道は』(日本テレビ系)が2週にわたって放送された。番組によると、性犯罪の被害者の4割は子どもで、加害者の8割が顔見知り、例えば教師や父親からの被害を受けており、「これはみんながやっていること」「大切な子にすることなんだよ」などと言われ、納得させられていたという。何も知らない子どもの心理に巧みに付け込んで利用していることに憤りを覚えた。
性被害者が現時点で頼れるものは法律しかないが、日本では2018年、刑法が110年ぶりに改正されたものの、13歳以上の場合は、強い抵抗がなければ加害者を罰せられないということも描かれていた。問題はまだまだ山積だが、見て見ぬふりをしないことが、この番組制作者の願いに応えることだろう。
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