政府が進める福島第一原発での「除染土」の再利用、「汚染水」の海洋放出と大気放出に異議あり!
#原発 #環境省
政府が暴挙に打って出ようとしている。政府は現在、東北地方太平洋地震(東日本大震災)によって東京電力の福島第一原子力発電所で発生した炉心溶融(メルトダウン)など原子力事故で排出された「除染土」の再利用、同原発の汚染水を除染した上での海洋放出と大気放出を実施する方向で検討を進めている。
環境省の中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会は12月19日、こうした除染土について、「農地での再利用は問題ない」との見解を示し、除染土の再利用に向けた具体的な手続きや準備を行うとした。
福島第一原発の事故では原子炉の爆発により大量の汚染土壌が発生した。この汚染土壌は除去作業が行われ、中間貯蔵が行われているが、その除去土壌等は最大 2,200万立方メートルと推計されており、全量をそのまま最終処分することは、必要な規模の最終処分場の確保等の観点から実現性が乏しいと考えられている。このため、環境省では除染した土壌についての再利用を検討していた。
同検討会では、福島県南相馬市での除染土を再利用した実証事業で、再生資材化した除去土壌等を用いた盛土構造物を造成し、その後一定期間、放射線等のモニタリングを実施した結果、空間線量率、大気中放射能濃度は施工前、施工中において大きな変動がないことが確認された。また、盛土浸透水の放射能濃度の分析結果はすべて検出下限値未満であることが確認された、との結果を報告した。
実証実験では、除染土を通常の土で覆い、作物を試験的に栽培したが、作物から検出される放射性物質の濃度も想定より低かったことから、「農地での再利用は問題ない」との見解が示された。
同省では、福島県相馬郡飯舘村では現在も実証実験が行っており、この実証実験で問題がなければ、飯舘村長泥地区で来年度から準備工事を始め、2021年度から除染した土を使った農地の造成を始める予定。また、除染土は全国の公共事業などでも再利用する方針を打ち出している。
この問題については、地元福島やSNS上では、「汚染土壌をわざわざ除去したのに、それを農地に戻すのでは除去した意味がない」「いくら放射性濃度が基準値以下といっても、汚染された土壌には変わりはない」などの批判が殺到した。
実際、除染土を通常の土で覆い栽培した作物からは、想定以下の放射性物質しか検出されなかったと言っても、この作物を摂取した場合に人体に与える影響などは、短期間で現れるものではなく、明らかになっていない。それでも、農地の造成に踏み切るという政府の判断に批判が出るのは至極当然だろう。
除染土の問題よりも衝撃的なのは、福島第一原発から出ている汚染水を海洋放出と大気放出する方向で検討が進んでいることだ。
経済産業省の汚染水処理対策委員会多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会は12月23日、福島第一原発から出ている「トリチウムなどを含む汚染水」(以下、汚染水)について、基準以下に薄めて海に放出する案と蒸発させて大気中に放出する案の2案に絞って今後の対応を検討すると発表した。
福島第一原発では、メルトダウンによって溶け落ちた核燃料を水で冷却する作業を行っている。現在1000近いタンクに約117万トンの汚染水が保管され、毎日170トン前後のペースで増え続けている。貯水タンクは2020年末までに137万立方メートルまで増設を行う計画だが、現在の計画では2022年夏頃にはタンクが足りなくなる見通しだ。加えて、現在の計画以上にタンクを増設する余地がほとんどないことから、汚染水の処理をどのようにするのかが重大な課題となっている。
当初、この汚染水の処理については、地層注入、海洋放出、水蒸気放出、水素放出及び地下埋設について検討されたが、コストや技術面で厳しいことから、海洋放出と大気放出に絞って検討が進められることになった。
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