『M-1』下馬評を覆したミルクボーイの漫才と、4つの「うねり」
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上沼恵美子「ネタのセンス、これは抜群ですよ」
今年の『M-1』は、敗者復活を除く9組中7組が決勝初出場という点でも特別だった。和牛やミキといった優勝候補、あるいはカミナリやトム・ブラウン、マヂカルラブリーといった決勝経験者は準決勝で敗退し、敗者復活へと回っていた。アインシュタインや四千頭身といったバラエティ番組でもおなじみの面々も、決勝には進めなかった。決勝初出場の7組には、あまり名前が知られていないコンビが並んだ。
そんな初出場組の中から次の「うねり」が起こる。7組目は 、結成12年目のミルクボーイ。ツッコミ役の内海崇と、ボケ役の駒場孝のコンビだが、世間的にはほぼ無名だ。
角刈りにダブルのスーツという昭和感を醸し出す 男と、上半身がやけにがっちりとした体形の男がセンターマイクの前に立つ。しかし、そんなビジュアルにまったく触れることなく、2人はすぐにネタに入っていく。
ネタは、駒場の母親が忘れてしまった好きな朝ごはんの名前を、内海が一緒に考えるというもの。どうやらそれはコーンフレークらしいのだけれど、内海が「コーンフレークやないか」と言うたびに、駒場が「死ぬ前の最後のご飯もそれでいいらしい」などコーンフレークっぽくない情報を提供する。「ほなコーンフレークちゃうがな」と言うと、今度は「なんであんなに栄養バランスの五角形がでかいんかわからんらしい」などコーンフレークっぽいヒントを出してくる。
2人の間で往復する肯定と否定。正と反。その往復運動が推進力となり、会場を笑いの渦に巻き込んでゆく。さらに、内海の少し批評的なツッコミがことごとくハマる。
「コーンフレークはね、まだ寿命に余裕があるから食べてられんのよ」
「コーンフレークはね、まだ朝の寝ぼけてるときやから食べてられんのよ」
「コーンフレークはね、朝から楽して腹を満たしたいという煩悩の塊や」
そのツッコミは目の前の駒場を越え、そこにないコーンフレークに向けられる。いや、違う。さらに向こう、コーンフレークを朝食としていただいている世間へと向いている。センターマイクの前でほとんど動きのない2人のやりとりに、奥行きが生まれる。最初に口にした子どものころには感じていたはずの、「なんだこの食べ物」という原初体験が蘇る。
審査員が彼らの漫才につけた点数は681点。アンタッチャブルが2004年にマークした673点を超え、『M-1』史上最高得点を叩き出した。当然、順位はかまいたちを抜き、暫定1位。98点をつけた審査員の上沼恵美子も、(自分のCDの宣伝を抑えて) 絶賛した。
「ネタのセンス、これは抜群ですよ」
さて、7組が漫才を終えたところで上位3組はミルクボーイ、かまいたち、和牛。いずれも関西系の吉本芸人だ。これで最終決戦は決まったか。そんな空気になった。しかし、『M-1』の「うねり」は最後にもう一度待っていた。それは東のほうからやってきた。
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