サイテー映画との出会いは人生を大きく変える!? 『死霊の盆踊り』ほか映画史に残る珍作奇作たち
#映画 #インタビュー
鬼畜映画をめぐる、ちょっといい話
――叶井さんは90年代に映画業界に入り、香港映画『八仙飯店之人肉饅頭』(93)を大ヒットさせて映画業界の名物男に。
叶井 江戸木さんがきっかけですよ。僕がいたアルバトロス社に、江戸木さんがアドバイザーをしていたJCAという会社が「こんな映画があるんだけど」と『人肉饅頭』を売り込みにきた。当時のアルバトロス社はフランスの文芸映画を扱うような会社だったけど、ビデオ部門を立ち上げることになり、『人肉饅頭』しかないと俺も猛プッシュした。江戸木さんとの付き合いは『人肉饅頭』からだよね。『人肉饅頭』が当たったんで、『人肉天婦羅』(93)、『人肉竹輪』(93)、『香港人肉厨房』(92)とひどい映画を次々とリリースしたよね。
江戸木 90年代前半の香港は、97年の中国返還を直前に控え、「三流片」と呼ばれるトンデモない映画がどんどん作られていた時期だった。『実録 幼女丸焼き事件』(93)は中国大陸から流れてきた元人民解放軍が香港でマフィア化しているという内容で、サイモン・ヤムが主演。今の中国では絶対に無理。『人肉饅頭』で犯人役を演じたアンソニー・ウォンは、主演映画『淪落の人』の舞台あいさつのためについ先日、東京に来てた。僕は舞台あいさつの司会をしたんだけど、すごくいい人で驚いた。『淪落の人』も感動必至の感動作(2020年2月公開予定)。アンソニー・ウォンが出演した『エボラ・シンドローム 悪魔の殺人ウィルス』(96)や『ザ・ミッション 非情の掟』(99)の宣伝プロデュースをしたことを本人に伝えると、笑っていたけどね。
叶井 最近、アンソニー・ウォンはあまり映画に出てないんじゃない?
江戸木 香港のデモ運動を支持するようなコメントをSNSでしているから、映画に出れなくなっている。反体制的な発言をするタレントは、中国政府が映画会社に圧力を掛けて、映画に出演できなくしてしまうから。それでもアンソニー・ウォンは男気のある人で、低予算で制作された『淪落の人』にはノーギャラで出演している。逆にジャッキー・チェンは中国でシネコン・チェーンのオーナーとして大儲けして、中国寄りの発言ばかりで、今の香港ではかなり嫌われている。
叶井 アンソニー・ウォンはタブーのない、自由を愛する人なんだね。
――ネクロフィリア(死体嗜好家)を主人公にした『ネクロマンティック』(87)も、映画マニアの間で話題を呼びました。
叶井 江戸木さんが雑誌で“ヤバい映画”の特集記事を組んでいて、そのときに紹介していたのが『ネクロマンティック』や『ラットマン』(93)だった。俺、江戸木さんが紹介した映画は全部日本でリリースしようと使命感に燃えていたから(笑)。でも、江戸木さん、ドイツで発禁扱いされていた『ネクロマンティック』をよく発掘してきたよね。
江戸木 ホロコースト問題で廃刊になった、月刊誌「マルコポーロ」に書いた「マジで危ないビョーキ映画コレクション」を読んだんだね。以前から『ネクロマンティック』というドイツ映画があることは知っていたけど、観る手段がなかった。それでカンヌ映画祭に行ったときに、『ネクロマンティック』を知らないかと尋ねて回ったら、うまく当たった。映画マーケットは「松・竹・梅」となっていて、お金のある映画会社はホテルの一室をブース代わりにしていて、お金のあまりない会社は会場を仕切られたブースを使って営業している。それより、もっとお金のない人はスーツケースの中にビデオと資料を詰め込んで営業している。『ネクロマンティック』を持ってた売人は、さもヤバイもののようにこっそりとスーツケースからビデオを取り出してみせた。あのときはドキドキした(笑)。
叶井 『ネクロマンティック』の主演俳優ダクタリ・ロレンツは、たまたま日本にいて「NOVA」の英会話講師のアルバイトをしていたんだよね。死姦映画に主演したせいでドイツで俳優業を続けられなくなって日本に来たらしい。「日本で『ネクロマンティック』をリリースされると、英会話の講師ができなくなってしまう」と泣きつかれたんだけど、「5万円あげるから」って言ったら緊急来日記者会見に出てくれることになった。結局、「NOVA」はクビになってドイツに帰ったんだけど、俺のところに『モスラ』のラジコンを送ってくれと電話を掛けてきて、渋谷のパルコで買った5~6万円するモスラのラジコンを送ったら、『キラーコンドーム』(96)のうねうね動く巨大コンドームとして使われていた。俺の送ったラジコンが『キラーコンドーム』の小道具になったかと思うと、ちょっと感動したね。
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