ラグビー、侍ジャパン、バレー……2019年のスポーツコンテンツに”リスペクト”はあった?
#スポーツ #ラグビー #熱血!”文化系”スポーツ部 #バレーボール
TBS『ノーサイドゲーム』の功績
むしろ、事前の盛り上げ役という意味で一翼を担っていたと思うのは、ラグビーの素晴らしさ、ラガーマンたちの猛々しさを端的に表現していた数々のラグビーCMであり(中でも傑作は、三井住友銀行の「ラグビー日本代表 挑戦と継承」篇/参照記事1)、W杯開幕直前まで放送していたTBSドラマ『ノーサイドゲーム』(参照記事2)だ。
特に『ノーサイドゲーム』の熱量はすさまじかった。あれほどスポーツ描写に、スポーツそのものにリスペクトのあるドラマを私は知らない。この作品で「ジャッカル」というラグビー用語を覚え、W杯で「あ、ドラマで見たやつだ」となった人もきっと多いはず。日本テレビの宣伝になってしまう……という矮小な考え方にはならず、日本ラグビーを盛り上げようとこの企画を徹底した制作陣には、ただただ敬意を評したい。
こんなにもラグビーへの愛とリスペクトに満ちたコンテンツがあったことがもはや遠い過去のように、W杯後はまたバラエティ&ワイドショー的な取り上げ方ばかりになっているのがとても心配。ライト層への継続した訴求は必要なこととはいえ、これでは飽きられるのも早いのではないか、と危惧してしまう。
このほかにも、今年、拙コーナーで取り上げる上で意識してきたのは「伝える側にリスペクトがあるかどうか」。侍ジャパンの面々に意味不明で不可思議なニックネームをつけた日刊スポーツについてもそう(参照記事3)。相も変わらず競技とは関係のないところでの盛り上げに躍起になるバレーボールもそう(参照記事4)。どうしても、目先の集客、ネットでの“あえてのプチ炎上”を目的に、選手に、ファンに、そしてスポーツそのものにリスペクトが足りないものはまだまだ多い、という印象を受けた1年だった。
そんななかでも、もちろんリスペクトに満ちたコンテンツもあった。その一例が上述したラグビードラマやCMであり、見事に完走したNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』もそうだ(参照記事5)。
大河ドラマ史上初の平均視聴率1桁台(全47話で8.2%)という視聴率ばかりが話題になった『いだてん』。だが、そんな目先の数字にとらわれることなく、見事に日本スポーツの始まりから東京オリンピック1964までを描いてみせた。間違いなく、スポーツドラマ史に残る傑作だった。
そんな『いだてん』で貫かれたのは、先人たちに対するリスペクトだ。日本スポーツ黎明期の知られざる偉人たちに光を当て、膨大な歴史的資料や選手たちの日記、そして記録を総ざらいした本作は、ドラマとしてはもちろん、スポーツ文化史的に見ても稀有な作品だった。ニュースになるほどの低視聴率のなか、スポーツへの敬意をブレずに貫けたのは、NHKだからこそ、というべきなのだろうか。
そんなNHKは先日、来る東京オリンピック・パラリンピックに向けて、自局のキャッチフレーズを発表した。その言葉は「挑戦に、リスペクトを。」……NHKはやっぱりわかっているなぁと、年の瀬にホッと一息ついた次第。
いよいよオリンピック本番を迎える2020年。来年も、そして来年こそ、スポーツを伝える視線にリスペクトが徹底されんことを。
(文=オグマナオト)
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事