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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 離婚のうしろめたさとその解放
話題のルポルタージュ「ぼくたちの離婚」著者インタビュー

家庭が壊れるのは男のせいなのか? 男性特有の「離婚のうしろめたさ」とその解放

離婚は「治療」症状が悪化する前に決断すべし

——本作はルポの形式をとっていますが文章にする段階ではどんなことを意識しましたか。

稲田 この連載が決まって「バツイチ会」に招集をかけたんですよ。そこでみなさんにも意見を出してもらったんですが、ディティールが大事じゃないかって話になったんですよね。事の推移だけ書いてもダメで、例えば、元奥さんの実家の場所や、男が何を目的に上京してきたかとかの細部ですね。だから、原稿では身バレを防ぐために固有名詞は変えているけど、地名なら東京から見ての都市の規模感とか、その本質の部分は変えていません。対象者の職業についても、忙しさや働き方、ステータスといった、変えてはいけない部分は残しているので、その改変のさじ加減にはかなり時間をかけています。

——エピソードに具体性がすごくあったので、周囲の人ならば誰の話かわかってしまいそうだなと思いました。

稲田 ほとんど変えていないものも多いので、その人に近い人なら全員がわかると思います。だからこそリアリティを持っているし、まえがきにも書いたんですが、書籍化の段階で掲載しないでくれといわれたケースもありました。

——いまでは再婚されている方も多かったですしね。

稲田 出てくれた13人のうち8人は再婚しています。みんな一番苦しい時期は過ぎていたので、取材を受けてくれたんだと思います。渦中の人だったら話せないでしょう。離婚直後は、「もう二度と結婚しない」という人と、「すぐに次へ行きたい」という2パターンに分かれるんですけど、二度と結婚したくない人は、相手云々ではなく自分が日本の婚姻制度に合わないと感じてしまった人。後者は、婚姻制度には文句がないが、相手を間違えたと思っている人です。

——そういう意味でも、やはり離婚について男性の語りしろはまだまだありそうですね。

稲田 そうなんです。特に田舎だとおおっぴらに離婚の話がされることはほとんどありません。でも、よくよく聞いてみると、離婚経験のある親族がいたりするんですよね。それを知らされていないから、一族のなかで自分だけが離婚してしまうのは恥だと思って、我慢を続けてしまうケースもある。そういう事態にならないように、もう少し我々の世代から離婚をオープンにしていけないかと思っているんです。

——世間体を気にして離婚を我慢する必要はないんじゃないか、と。

稲田 そうそう。決して離婚を推奨するわけではないけど、限界まで我慢して自分が壊れてしまう必要はない。離婚は治療なんです。よくない夫婦関係というのは病気の状態だから、我慢しても意味がない。我慢しても悪化するだけだから、這いつくばってでも病院に行って早い段階で薬をもらわないと。極端な話、離婚を不名誉な犯罪歴みたいに思ってる人もいるじゃないですか。歴をつけたくないから頑張らないとって。その認識はよくないから変えていかないといけないと思います。

——自分が置かれた状況を俯瞰してみるためにも、「ぼくたちの離婚」でいろんなエピソードを知ることは役立ちそうです。

稲田 そうですね。それと、離婚“後”について語られることもあまりないんですよね。実際は、そのあとに幸せに暮らしてる人もたくさんいるのに。だから離婚というものが、いつまでも悲劇のままで終わってしまう。この書籍を通じて、もっと男性がオープンに離婚を語れるような社会になっていけばいいなと思います。

稲田豊史
1974年生まれ。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。著書に『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)。「サイゾー」「SPA!」などで執筆。

最終更新:2019/12/18 12:12
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