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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 離婚のうしろめたさとその解放
話題のルポルタージュ「ぼくたちの離婚」著者インタビュー

家庭が壊れるのは男のせいなのか? 男性特有の「離婚のうしろめたさ」とその解放

離婚取材はまるでカウンセリングのようだった

——たくさんの離婚経験者を取材したことは、稲田さんご自身の離婚を振り返るきっかけにもなりましたか?

稲田 そうですね。でもそれは新たな気づきというよりも再確認という感覚です。いろんな人がこれを読んで、自分の一部がそこに書いてあると感じるように、僕にとっても、すべてのエピソードでどこかしらに共感性がありました。そういう意味では、この企画の発端となった「バツイチ会」と同じ効用がありましたね。話すことで解決されるわけではないけど、このいびつな形の苦痛は自分オリジナルのものではなく、他の人も経験している類のことなのだとわかる安心感。実際、取材のたびに「それ、すごくわかります」とたくさん言ったし、相手から「そうですよね!」と言われて、共感しあっていました。

——なんか、カウンセリングのようでもありますね(笑)

稲田 実際、取材対象の方にそう言われたこともあります。カウンセリングって、話を聞くことが大事なんですよね。あなたの言っているその“ごちゃごちゃ”に輪郭づけるとこういうことで、それは私にもよくわかると認めてあげること。だから、取材の場では僕が自分の話をすることも多かったです。こっちが無傷ではフェアではないですからね。取材の形としてはちょっと変わっているかもしれません。

——取材対象の方たちも、話を聞いてほしいモードなんでしょうか?

稲田 一応、本当にわずかな謝礼はお支払いしているんだけど、そんなのどうでもいいから、俺の話を聞いてくれって感じですね(笑)。で、話しきってすっきりするという。ことの顛末を頭から最後まで誰かに話したことがない人がほとんどなんですよ。だって、おじさんの元妻の出会いから別れまでじっくり聞きたい人なんて誰もいないじゃないですか。友達だって、いいとこ15分くらいで別の話題に切り替わるでしょう。それを相槌を打ちながら、一切否定せずにすべて絞り切るというのがよかったんだと思います。

——取材時間もかなりかかっていそうですね。

稲田 長いときは6時間以上話を聞いてます。みんな話のプロではないから、順序立てて話したりできないじゃないですか。だからそこは自然に任せて、出てきたエピソードを頭の中で順序立てて組み立てながら聞いていきました。6時間の人の場合、3時間くらい聞いてようやく、こことここの話がまだ出てないなってことが見えてきたので、補足するようにそこを聞いて埋める。でも、その穴埋め作業は相手が一通り話し終わるまで待ちますね。とにかく話の腰を折らないですべて吐き出してもらうことが大事で、すべて聞き切ったところでポロポロとディティールの話が出てきたりするんです。

——疲れないですか?

稲田 すっごい疲れますよ(笑)。しかもテープを起こすときにまた6時間の音源を聞くから二度疲れます。まあ、いい疲れだなと思ってやっていますけどね。

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