消費税を上げて法人税は下げる…なぜ労働者ばかり搾取されるのか
10月から消費増税がスタートした。株式会社ワークポートが11月に発表した調査結果によると、「消費増税を負担に感じている」と回答した人は57.8%と6割近くにのぼる。
しかし経団連がまとめた2020年春闘の指針の原案は、そんな庶民の負担感とは程遠い。企業側に賃上げを要求する方針を掲げつつも、全社員一律ではなく個々の実績に応じて配分するという。一方で生産性向上のため、業務へのモチベーションを高めることを訴えるつもりのようだ。
賃上げに対して慎重な姿勢を見せる経団連。社会学者の西田亮介氏は12月4日『モーニングCROSS』(TOKYO MX)内で、「経済界は日本社会の負担を負わなければいけない」と厳しく批判していた。
法人税率を下げても国際競争力に影響はない
『モーニングCROSS』で西田氏は、「法人税率の引き下げはずっと続いている」と消費税率は増加しているが企業側の税負担は年々減少していることを指摘。
実際、法人税率は1990年度(40%)から2018年度(23.2%)では大幅に下げられており、法人税の税収は1990年度(18.4兆円)から2018年度(12.3兆円)と減少している。
法人税率の議論になると企業側は「税率が上がると海外に拠点を移すことになる」「日本企業の国際競争力が落ちてしまう」と反論してきた。
しかし西田氏は、「世界の法人実効税率(法人税、地方法人税、住民税、事業税の合計税理)は20~30%と団子状態になっている」「法人実効税率を下げたからといって、日本企業の国際競争力が強くなることはない」と看破した。日本の法人実効税率は29.74%だが、フランス(31.00%)、ドイツ(29.89%)、アメリカ(27.98)と大きな差はない。
そもそも日本では2018年度の内部留保が過去最高の463兆円に達しており、西田氏は「法人税率、補助金控除、外形標準課税の総合的な見直しが必要。内部留保の1%を課税するだけでも4.6兆円になる。4.6兆円は消費税2%相当の税収額になります」と、税率見直しを提案した。
また西田氏は、企業が賃上げをするのであれば法人税率を引き下げても構わないとするが、一向に賃上げする気配がない以上、政府主導で内部留保を還元する政策を設け企業も税負担を担うように制度改正すべきだと続けた。
内部留保を3%人件費に回せば最低時給1500円は可能
内部留保の還元については以前、日本の労働問題を研究してきた金沢大学名誉教授・伍賀一道氏に取材した。
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伍賀氏は労働総研の内部留保に関する研究を上げ、<その試算によれば、現在の内部留保の約3%ほどを人件費に回せば、最低時給1500円は可能><政府主導で『内部留保を従業員に還元しなさい』と促す取り組みをすべき>と提言。東京都の最低賃金は2019年12月現在で1013円(時給)だが、まだまだ低いといえる。
そして経団連の2020年春闘の指針原案からは、最低賃金1500円までの道のりは遠いと考えざるを得ない。消費増税企業の税負担の見直しや最低賃金の引き上げなど、国民の生活を守り安定した社会を維持するために政府が検討すべき策は多くあるはずだ。
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