スニーカー中毒者を量産する中国「ファッションアプリ」の裏事情
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尽き果てぬ「限定アイテム需要」
「自分、イージーブーストは6足持っているんですよ。先日も近々入る予定のアルバイト代を見越して、1足5万円以上で買ったばかり。毒のアプリを使っていると、本当の中毒者になってしまうんですよ」
そう語ってくれた夏目氏だが、中国のジェネレーションZ世代(2000年~2010年に生まれた世代)たちは、まだまだレアスニーカーにカネを使いそうだ。
実は毒のアプリ上では、毎月6~7回にわたって、限定スニーカーを無料でプレゼントするという「抽選会」をユーザーに向けてやっている。もちろん倍率は高いのだが、もらえるものは、もらっておきたい。
実はここにも、仕掛けがしてある。毒のユーザーがもし、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などでこうした抽選会のお知らせをシェアすると、抽選に複数回チャレンジすることができるようになるのだ。
スニーカー中毒者が、さらなるスニーカー中毒者を増やす。そんな成長サイクルによって、運営会社である上海识装信息科技の企業価値は30億元(約450億円)に。今や中国のポテンシャルユニコーン企業と呼ばれている。
思えば中国ではつい先月に、ユニクロと米ニューヨークのデザイナー「カウズ(KAWS)」とのコラボレーション商品が発売されて、各地のユニクロ店舗では狂ったような奪い合いが起きたことが記憶に新しい。
また私の会社オフィスの目と鼻の先にある「コム・デ・ギャルソン」の店舗でも、数量限定のTシャツなどを買うために、ものすごい人数の中国人が行列をしている光景をよく見かけるのだ。
レア物、限定物、希少物。こうしたアイテムを求める中国人たちのエネルギーは、世界中のファッションブランドを巻き込みながら、しばらく尽きることがなさそうだ。(月刊サイゾー8月号より)
文・写真/後藤直義(ごとう・なおよし)
1981年生まれ。青山学院大学文学部卒。毎日新聞社、週刊ダイヤモンドを経て、2016年4月にソーシャル経済メディア『NewsPicks』に移籍し、企業報道チームを立ち上げる。グローバルにテクノロジー企業を取材し、著書に『アップル帝国の正体』(文藝春秋)など。
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