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発がん性コバルトを子どもたちが素手で採掘……小泉進次郎環境相が知らない「EV普及の闇」

コンゴのコバルト採掘場で暴行を受けながら強制労働させられる8歳男児

「市場投入を一日でも早くしたい。今の目標は2025年だ」

 10月、「東京モーターショー2019」を訪れた小泉進次郎環境大臣は、脱炭素社会の実現を目指し、消費電力を従来の約2割削減できる新型EV(電気自動車)を前に、こう勢い込んだ。

 すでに世界中で広く普及しているスマホやEVに共通して欠かせないものといえばバッテリーだ。何度も繰り返し充電できるリチウムイオン二次電池が使われているが、この電池を製造するのに重要な材料がコバルトという金属である。

 コバルトの産出量の約7割を占めているのがアフリカのコンゴ民主共和国だが、採掘現場の中には劣悪な環境のところも多く、そこで働く作業員の安全性をまったく考慮していなかったり、幼い児童を働かせたりしているという。

 今年6月には鉱山開発大手企業の所有する銅山で、作業員43人が死亡するという落盤事故が起きた。10月にも別の金鉱山で同様の事故が発生し、少なくとも22人の作業員が死亡している。

 これまではクリーンエネルギーの名の下、スマホやEVの普及が優先され、これらの問題には目がつぶられてきたが、最近になり、大きく問題視されるようになってきた。

 コンゴは金属や鉱物の埋蔵量が非常に多く、特に南部に集中している。この地で起こっている問について、イギリスの経済紙「フィナンシャル・タイムズ」が伝えた。

 それによると、多くは大手鉱山開発企業によって大規模な採掘が行われているが、その一方で非公式な「闇採掘場」も存在しており、そこでは作業員が素手で採掘を行っている。

 闇採掘場で働く専門の作業員や違法採掘者の数は15万人ほどとされており、そこで働く児童の数も増えているという。コンゴ産コバルトのうち、3割はそういった場所から採掘されたものと推測されている。ちなみにコバルトは発がん性物質であり、また、ぜんそくや肺炎、皮膚炎を引き起こすとされていることから、取り扱いには注意が必要だ。しかし、コバルト採掘場で働く児童らが、そうした危険性をどれだけ理解しているかは不明である。

 地元の役所は、非公式の作業員に協同組合を組織させ、決められた場所で採掘させることで作業員の収入を上げ、児童労働を減らそうという努力をしているが、その取り組みはまだ始まったばかりだ。一部の大手自動車企業は、コンゴ以外の国からコバルトを仕入れることを表明したり、最近はコバルト以外を使ったバッテリーの開発にも力が入れられているが、児童労働などの問題が根本解決したわけではない。

 クリーンエネルギーは、子どもたちの未来にとってもクリーンでなければなるまい。

(文=高田信人)

高田信人(たかだ・のぶひこ)

1981年生まれ。大学卒業後、旅行雑誌やガイドブックなどへの執筆を続けながら、中国をはじめ世界を放浪。帰国後は、実話誌やネットメディアで記事を執筆している

たかだのぶひこ

最終更新:2019/12/09 20:00
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