りんごちゃん「男か女か」の性別イジりを終わりにする方法
12月4日、その年に検索数が急上昇した人物などを表彰する「Yahoo!検索大賞2019」の授賞式に、大ブレイク中のものまねタレント・りんごちゃんが出席。そこでりんごちゃんの性別に踏み込むような一幕があり、物議を醸している。
りんごちゃんは「お笑い芸人部門賞」を受賞。授賞式で、りんごちゃんが赤いドレスを着て登壇すると、司会の今田耕司が「りんご“ちゃん”やねんなあ……さっき(舞台裏)まではりんご“くん”だったのにね」と、りんごちゃんの性別を示唆するような発言をした。会場はザワついたが、りんごちゃんは「さっきは出荷前だったので」と切り返した。
しかし会見でも今田はりんごちゃんについて「(男性用の)トイレで会ったら、ちょっと(股間を)のぞき込んでしまいますけどね」とコメント。りんごちゃんの性別を揶揄する今田に対して、SNSでは「完全にハラスメントでしょう」「見た目や性別で笑いを取る文化はもう古いっていい加減気づかないと」「いい加減、男か女の二択で人を見ていくのやめませんか」などと呆れる声が少なくない。
りんごちゃんの性別をイジっても、もう“笑い”は起こらない
今年いっきにブレイクを果たしたりんごちゃんだが、年齢や性別を公表していない。女性的な服装やメイクをしているが、過去にニューハーフバーなどで働いていたことを明かしており、おそらくは生まれついた体の性別は男性だったのだろう。
テレビでは、りんごちゃんのような出自を持つタレントにその性別をツッコんだり、体を触ったりして笑いを取ることは珍しい光景ではなかった。今でもその文化は残っているが、視聴者側には変化が訪れており、他人のセクシュアリティやプライバシーを軽んじる言動に、違和感や不快感を唱える人は30年前と比べれば格段に増えたといえるだろう。
今年8月放送の『踊る! さんま御殿!!』(日本テレビ系)にりんごちゃんがゲスト出演した際にも、そんな場面があった。
この日の番組は「コンプレックスのせいで傷ついた瞬間」についてトークを展開。司会の明石家さんまは、りんごちゃんの服装について「りんごちゃんなんかは男やろ? でも女物か、着てるの」と言い、ゲストのヒロミが「りんごちゃんはね、そういうのないの。りんごちゃんはりんごちゃんで、男とか女じゃない」とフォローすると「おっさんやないか、アホ!」とツッコみ“笑い”を生もうとした。りんごちゃんの性別をしきりにイジるさんまの態度に、視聴者からは「全然笑えない」「デリカシーがなさすぎ」など厳しい意見が相次いだ。
今年10月放送の『関ジャニ∞のジャニ勉』(関西テレビ)でも、村上信五が林檎ちゃんの胸を揉みしだいて笑いを取るシーンがあった。りんごちゃんがマツコ・デラックスのものまねで「嫌いじゃないんだけど」と言い放ち、その寸劇は終わったが、SNSでは「セクハラではないか」といった批判も噴出していた。りんごちゃんの性別がどうあれ、その出で立ちや振る舞いが女性的であることは疑いない。
「メイクとかおしゃれが好きな女の子に見えたらそれで良い」
さて、冒頭の発表会見後の囲み取材でも、りんごちゃんへ報道陣からも「実際のところ性別はどうなのか?」と不躾な質問が飛んだ。しかし、りんごちゃんは「今日、この場で初めて言いたいと思います」と前置いて、「りんごちゃんはりんごちゃんです!」と宣言した。
さらに続けて、りんごちゃんは次のようなコメントをしている。
「Yahoo!さんで『りんごちゃん』って検索すると、次には『性別』とか、性別がいつもくっついている。そんなにみんな気になるんだと思っているんですけど、私はみなさんが思う通りで良くて。概念がなくて、メイクとかお洒落が好きな女の子に見えたらそれで良くて、おっさんだと思えばそれでも良くて、そういう形になっております」
本人の意思によらず極めてプライベートなこと、たとえばセクシュアリティについて、「本当はどうなんだ?」と他人が踏み込む態度は、これまで意識されずごく普通のコミュニケーションと思われて繰り返されてきただろうが、実はとても暴力的なものだ。ゆえに、その乱暴なやり方を避けてコミュニケーションを成立させることは可能なはずだろう。
りんごちゃんの場合、「メイクとかお洒落が好きな女の子」でも「おっさん」でもどちらでも良いということは、性別を明言したくはないということだ。その気持ちを尊重すれば、「男か女か」などもう二度と聞くことはなくなる。つまり相手を尊重することこそが、りんごちゃん性別論争に終止符を打つ、簡単な方法だ。決して難しいことではない。
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