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日刊サイゾー トップ > その他 > ウーマン・ウェジー  > 「家出したい子ども」をどう受け止めるか
【wezzy】

女児誘拐事件から考える、「家出したい子ども」を社会はどう受け止めるか

 11月、女児誘拐事件が連続して発覚した。一件目は、大阪府に住む小学6年生の少女が行方不明になり、栃木県に住む男の家から逃げ出した事件だ。伊藤仁士容疑者は今月10日ごろ、SNSを通じて「半年くらい前に来た女の子がいる。しゃべり相手になってほしい。うちに来ない?」と少女を誘い出し、在来線を乗り継いで栃木県の自宅に連れ込んだという。

 自宅に着くと伊藤容疑者は少女のスマートフォンを奪い取り、連絡手段を遮断。その後、少女は伊藤容疑者の家から抜け出し、近くの交番に駆け込み、保護された。伊藤容疑者の自宅には別の中学生の少女もおり、そちらも栃木警察は保護している。

 二件目の事件は今月27日に発覚。埼玉県で不動産業を営む阪上裕明容疑者が、家出希望の中学生を自宅に住まわせていたとして、未成年者誘拐の容疑で逮捕された。阪上容疑者は今年8月ごろ、Twitter上で家出願望を吐露していた中学生の少女に「相談にのるよ」「勉強するなら養ってあげる」などと声をかけて誘い出し、自分が管理する借家に住まわせていたという。阪上容疑者には、妻と子どももいた。

 阪上容疑者はさらにもう一人の女子中学生も同じようにTwitterで誘い出し、借家に住まわせていた。2人の少女には宅建の勉強をさせており、「将来、自分の仕事を手伝わせるつもりだった」と供述しているそうだ。

「人助け」だと犯人に同情、擁護する声
 相次いだ少女誘拐事件に、ネット上では様々な声が上がった。「男は少女を保護した」「少女は同意をしていた」と、容疑者を擁護する声も一定数ある。

 保護者の同意を得ずに未成年者を自宅に泊めていたとして逮捕者が出るたびに、「犯人は善意だった」「人助けが悪になるのか」と犯人を擁護する声は必ずわく。数年前、「神待ちサイト」なるものが話題になった際もそうだった。「神待ちサイト」とは、家出を希望する少女を含めた女性が掲示板にその旨を書き込み、自宅に呼びたい大人がそれに応じるというものである。

 ちなみに今も「神待ちサイト」を名乗るwebサイトは複数あるが、そこに表示されている女性たち(性行為と引き換えに食事や宿、金銭を求めている)のうちどの程度が実在するのかは不明。ユーザーが直接、書き込み主の女性とやりとりできるわけではなく、有料ポイント制の「出会い系サイト」への登録を促されるものが多く、サクラの可能性もあるだろう。

 ただ、売春を希望する少女や女性がいないわけではない。さまざまな理由から家出を望む少年少女もいるだろう。Wezzyでは2017年、家出した未成年への適切な対応について記事にしたが、『警察専門相談電話』#9110を紹介した。『警察専門相談電話』#9110は、発信すれば地域を管轄する各都道府県の警察総合相談室などの相談窓口に直接つながる。

 しかし、それ“だけ”が最適解だというわけではない。ここで思考停止してはいけないのだろう。今年3月、児童相談所で児童心理士として働いた経験を持つ心理カウンセラーの山脇由貴子さんに児童虐待について取材した際、「警察や児童相談所が、保護される子どもたちにとって居心地の良い場所とは限らない」との問題を指摘していた。

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「非行児童」として補導される
 山脇さんによれば、本来は虐待被害者として保護すべき児童なのに、非行という形で現れてしまっている複雑なケースもあるという。

 家庭になんらかの問題や事情があり、家に帰れず夜間徘徊をしている子どもが非行児童として保護され、家庭環境などを確認されることもなく、親元に帰されてしまう……そうしたことがあると、子どもの側も「警察には頼れない」「自分の味方ではない」と感じてしまうだろう。

<たとえば万引きで捕まえても、一度は児相に児童虐待の履歴がないか確認するなど、情報共有は徹底してほしいと思います。万引きにしてもなぜしたのか、家に食べ物がなかった可能性だってある。親に連絡するとかえってその子供が危険なケースだってあるわけです>

 また、児童相談所や保護施設には集団生活を送る上でのルールがある。ルールは必要だが、それも子どもにとって居心地の良い場所づくりのためであることを念頭に置き、改善していってほしい。山脇さんによれば、私語厳禁でスマートフォンやゲーム機の他、洋服といった私物の持ち込みも禁止、1日のスケジュールが細かく決まっており自由時間はほぼない……といった施設もあるという。

 こうしたことから、警察に通報して任せておけばそれですべてのケースが解決するといえるわけではない。児童はあくまでも保護対象であることが大前提だが、親や警察に対しての信頼を失い猜疑心を抱く子どもも存在することまで含め、児童のSOSを受けたときのより良いかかわり方を模索していく必要があるだろう。

最終更新:2019/11/29 05:30
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