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日刊サイゾー トップ > 社会 > 政治・経済  > 孫正義とNAVER会長の接点とは

ヤフーとLINEのAI恋愛協奏曲~孫正義氏とNAVER李海珍会長の接点について考察

李会長は一見温和だが、欲しいものには超攻撃的な性格

 また、こんな話もある。NAVERの成長のきっかけのひとつに、2006年に行われた「1noon」という検索システム開発企業の買収がある。1noonは非常に評価が高い企業で、グーグルとNAVERの間で争奪戦が行われた。1noonの経営陣はエリック・シュミット元CEOにも面会。NAVERより高い買収額を提示されていたのにも関わらず、最終的にNAVERに買収されることになった。この時に決め手のひとつとなったのは、李氏の経営者としての熱意だったと言われている。そして、1noonなどを買収し国内ポータルのシェアを占有した李氏は、後にグーグルなどグローバル企業から国内市場を守れたことを「誇りに思う」という趣旨の発言を残している。

 総合すると、李会長は一見温和だが、欲しいものには熱意と野心を持ってアプローチする超攻撃的な性格で、かつ先端技術への投資を惜しまない。そして、グローバル市場における競合に対して強い競争意識を持っている経営者だ。どこかの誰かに似ていないだろうか。そう、孫正義氏だ。そして、その似ているふたりが、日本と韓国の“AI危機”について共通した見解を抱いていたとしたらどうか。

 孫氏が「SoftBank World 2019」に登壇し、「日本はAI後進国」だと強く警鐘を鳴らしたエピソードは記憶に新しいが、韓国訪問からわずか10日後という事実も何か因縁めいたものを感じる。その発言の真意は落胆やあきらめ、焦燥ではなく、自分自身や社員に対する一種のカンフル剤であり発破だったのではないだろうか。そして次の一手が「ヤフー×LINE経営統合」だったと考えると、すっと腑に落ちるものがある。

 ここで詳しく書くことは叶わないが、NAVERは国内ではもちろん、欧州や東南アジアにおいてテクノロジー関連の研究・投資・買収を加速させている。GAFAもしくはBATに勝たなければ次がないと、本気で考えているふしがある。そのビジョンと孫氏が持つビジョンの一部が共鳴したと捉えるのは、今後の両社の動きを見守る上でとても重要になる気がする。というのも、もちろんポータルやメッセンジャーアプリ、決済やECなどなど、両社のサービスの外形が大きくなるというのは簡単に想像つく話だ。しかし、それだけでは単なる足し算に過ぎない。GAFAなど巨大な相手と競い合うには足りないのだ。必要なのは、GAFAを飲み込んでしまえるだけのより大きなビジョンであり、危機意識であり、物語だ。

 なお日本では今回の決定に孫氏は直接関与していないとしているが、韓国では「孫正義氏とネイバートップの李海珍氏の決断とみるべき」という主張がそこかしこにある。事実はおそらく前者なのだろうが……。伏線が出来過ぎているだけに、何かドラマのような物語性を感じる。そしてその物語の中心にあるキーワードはAIである。

 最後にAIについてだが、この世には無数のAIがあるし、これから仕事の数だけAIが増えていくはずである。反対になんでも解決してくれる魔法のようなAIはこの世に存在しない。確かに現段階ではGAFAはITプラットフォームから大量のデータを確保できるため、オンライン上のビジネスで優位にある。が、戦い方次第では勝機はあるはずである。それにデータを多く保有しているからといって、必ずしもGAFAが優位に立ち続けることができるとは限らない。AI術そのものも発展を遂げるし、いつかはディープラーニングなどに次ぐ新しい技術も登場するはずである。

 ヤフーとLINEの経営統合は、親会社であるNAVER、ひいては日韓のAI産業にどのようなシナジーを生むのか。同記事のPVが良ければ、別の機会にその具体的な可能性とシナリオを書いてみたい。

最終更新:2019/11/27 13:47
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