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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 波瑠、いくえみ綾作品にハマるワケ
ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

『G線上のあなたと私』波瑠がいくえみ綾作品にハマるワケ

必要以上に明るく振る舞わない、というスタイル

 波瑠は現在28歳。2004年に芸能界デビューしたが、当初は仕事がなく、エキストラのような脇役が続いた。07年頃からじわじわと仕事が増えていき、二番手三番手の、主人公の友達のクールな女の子などを演じることが増えていった。13年にいくえみの漫画を映画化した『潔く柔く』で演じたのも主人公の友達役で、主演というよりは脇で印象に残る演技を見せるショートカットのクールビューティというポジションだった。

 大きな転機となったのは、やはりNHK連続テレビ小説の『あさが来た』だろう。同作で波瑠が演じたのはヒロインのあさ。ちょっととぼけたところのある明るい天然の女の子で、それまで波瑠が演じてきた役とは真逆の王道ヒロインだった。

 驚いた時に「びっくりぽんや」と言うのが口癖の喜怒哀楽がはっきりした女性で、感情表現も驚くと目を見開いて文字通り“びっくりぽん”という表情をする。

 つまり同作に出演したことで、脇で面白いことをやる通好みの演技から、ど真ん中で作品を支える主演の演技を身につけたといえよう。

『G線上』でも、驚いた時に目を見開く“びっくりぽん”な表情は健在。いまや波瑠の十八番だが、大きく変わったのは表情の緩急くらいで、実は朝ドラ以降も波瑠の本質はそこまで大きく変わってはいない。

 確かに『あさが来た』以降、彼女を取り巻く状況は大きく変わり、主演が続いている。その多くはコメディテイストのお仕事モノだが、肝心の波瑠は昔からのさめた感じを今も保っている。それは、じめじめとした陰気さとは違うもので、必要以上に明るく振る舞わないという微妙なさじ加減のクールな微温感としか例えようのないものである。だからこそ、いくえみ作品のヒロインにハマったのだろう。

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

最終更新:2019/11/26 09:46
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