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エッジ・オブ・小市民【5】

その“夢”は現実に何をもたらすのか——嘘と混乱の東京オリンピック

日本中を脱力させた“暑さ対策”

 そして失笑の嵐を巻き起こしたのが“暑さ対策”だ。五輪組織委員会の森喜朗会長は「暑さはチャンス」などと相変わらずズレたことを言っていたが、結果的にチャンスどころか今回の東京オリンピックのダメなところをこれでもかとばかりに見せつけることになった。

 マラソンコース沿道にある商業施設やビルの出入り口を開放して冷気を外に流そうという“クールシェア”案の他力本願ぶりは「え? それ本気なの?」という感じだったが、小池百合子東京都知事が打ち出した“打ち水作戦”には本気で脱力させられた。そんなものであの酷暑がどうにかなると本気で思っているのか。ついでに、“浴衣”“よしず”の活用なんてことも言っていたけれど、真剣に聞いている人はどのぐらいいたんだろう。300キロ分の氷を降雪機で降らせる人工雪実験も「本当に大丈夫なのか東京都」と世間を騒がせたが、気温は下がらず、ただ服や席を無駄に濡らせるだけで、普通に考えたらそりゃそうだろうという結果に終わった。

 新国立競技場の冷房設備は、なぜか安倍首相の鶴の一声で設置されないことが決定したので、かち割り氷を配るとかいう本末転倒な話になっていたが、そもそもなんで安倍首相がそんなことを決めてしまうのかという話である。「会場周辺に朝顔の鉢を並べて視覚的にも涼しく!」という案が発表されたときに誰もが「ダメだこりゃ」と思ったことだろう。

 森会長の「東京オリンピックのレガシーのひとつにしたい」という、いつもの寝言でサマータイム導入なんてことも議論されて本気で心配したが、ここはちゃんと断念できて本当に良かった。

 暑さ対策の一番の切り札とされたのが、マラソン・競歩コ−スの遮熱舗装。24億円という資金を投じて実施されてしまったそうだが、なんとこれが逆効果。温度が下がるのは路面だけで、高い位置では普通のアスファルトより温度が高くなって熱中症のリスクは高くなってしまうという。さすがに驚いた。どうしてやってしまう前にしっかりと検証しなかったのか。

 次から次へと“バカげた”というほかない対策が打ち出され、その度にどうしようもない無力感に襲われた。そして、迷走に迷走を重ねた末、ご存知のようにマラソンと競歩はIOCの判断によって札幌開催が決まってしまったわけだが。こんな無様な話もそうない。とはいえ、招致段階で東京の気候について嘘をついていたことがそもそも悪いわけで、IOCの判断、ましてや札幌市を責めるのは筋違いというものだろう。さようならコンパクト五輪。

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