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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 侍ジャパン世界一の裏に野村克也?
熱血!”文化系”スポーツ部

侍ジャパン10年ぶりの世界一奪還の裏に、野村克也のID采配?

侍ジャパンオフィシャルサイトより

 スポーツ系の情報番組やスポーツニュースは、時に番組や局を横断して視聴することで見えてくる深みがある。

 野球やサッカー、今年でいえばラグビーW杯のような注目競技の場合、各番組で解説者が「考察」や「論」を示してくれる。ただ、元選手や名将といっても、すべてを的確に解説できるわけではない。時には“推論”で語り、それが外れている場合がある。

 ダルビッシュ有など「モノ言う選手」の場合、自らのSNSなどを使って「(○○が)あんなこと言ってましたけど、全然そんなことないですよ」といったアンサーを示してくれて、その「答え合わせ」が楽しくもある。

 そして、選手自身が発信しなくても、時にこの「答え合わせ」を偶然、他局のニュースがしてくれることがあるのだ。そんな象徴的なシーンが、侍ジャパンをめぐるニュースであったので記しておきたい。

 事の発端は、『S★1』(TBS系)でのノムさんこと野村克也氏の解説から。16日に行われた世界野球プレミア12、スーパーラウンド第4戦の日本対韓国戦でのこと。この試合では日本の先発、岸孝之(楽天)が6失点。結果的には10対8の乱打戦を制して侍ジャパンが勝利したわけだが、翌日に連夜の韓国戦(決勝戦)を控え、「こんなに打たれて、日本の投手陣は大丈夫?」と思ったファンも多かったはずだ。

 そんな視聴者の声を代弁したのか、この日の『S★1』名物「ノムさんぼやき解説」では、バッテリーへの苦言が目立つ形に。実際、投手の配球について、こんなコメントがあった。

「このキャッチャー、インコース好きだね。インコースを攻めるのが強気、とキャッチャーは勘違いしちゃいかん」

 翌17日の決勝戦。先発の山口俊(巨人)は初回に打ち込まれてマウンドを降りたものの、その後を受けた救援陣が見事な継投。侍ジャパンが10年ぶりに世界一を奪還した。

 興味深かったのが、優勝から一夜明けた18日の『報道ステーション』(テレビ朝日系)スポーツコーナーでの一幕だ。この日は侍ジャパンの稲葉篤紀監督が生出演し、今大会での戦いぶりや采配の裏側について、稲葉監督自らが“名将解説”。その中で、ノムさんがぼやいた「岸のインコース攻め」が話題になった。

「岸投手から、インコースをどんどん攻めたほうがいいですか? と提案があったんです」と明かした稲葉監督。つまり、ある意味で消化試合になってしまった16日の韓国戦で相手打線を抑えることよりも、翌日の決勝戦を見据えて「韓国にインコースを意識させる」という、あえての配球だったわけだ。

「自分の投球よりも、チームのために自分が犠牲になって、布石を打ってくれたんです」という稲葉監督の言葉に、「ノムさん、聞いてますか」と言いたくなった次第。侍ジャパンの監督に就任するまで、解説者として籍を置いていた古巣の『報道ステーション』だからこそ、稲葉監督もここまで明かしたのかもしれない。

 でも、よくよく考えれば、ノムさんならば「あえてのインコース攻め」なんて当然わかっていそうなもの。思い出すのは1995年の日本シリーズ、ヤクルト対オリックスでの野村ID采配だ。

 ヤクルトを率いていた当時の野村監督は、オリックスのイチローを封じるため、シリーズが始まる前からメディアを使っての情報戦を展開。「イチローを封じるには、内角を攻めずしてありえない。内角を攻める。内角を生かす。内角を意識させる」と公言(※「スポーツ報知」より)することで、あえてイチローにインコースを意識させ、天才バッターの調子を崩して日本一を手にした。

 あの日本シリーズを、ヤクルトの選手として直々に学んだ稲葉監督。その率いるチームが「あえてのインコース攻めを実践した」という点も、なかなかに味わい深い。

(文=オグマナオト)

最終更新:2022/02/15 17:57
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