
秋葉原のアダルトゲーム屋外広告はなぜ撤去されたか。“オタクの街”の在り方と行政の対応
過日、秋葉原の大通りに出現した巨大なアダルトゲームの屋外広告が問題視され、数日で撤去となった。
秋葉原の街中に位置する、ゲームやDVDを販売する店舗のビルに張り出された問題の広告は、バストや臀部を極端に露出した大勢の女性キャラクターのイラストが描かれたもの。「超エッチ」「おっぱいハーレム」「孕ませ」などのコピーが並ぶ、アダルトゲームの広告だった。
この広告掲示についてSNSで拡散されると、「あんなに肌が露出している内容の広告を街中に出していいのか」「アダルトゲームの屋外広告は不適切ではないか」と疑問視する声が続出した。徒歩2分ほどの距離には小学校もあり、登下校中の児童への影響を懸念する意見も多かった。
結局、問題の広告は11月8日の時点で撤去されている。
一方で、ネットでは広告が撤去されたことに抗議する声も見られた。秋葉原はサブカルチャー・オタク文化の街として有名であることから「秋葉原はそういう街だろう」「秋葉原に来ない奴が文句を言うな」との意見も噴出。ただし、そうしたカルチャーを支持する人たちの間でも「これはさすがにやりすぎ」「文化を守るためにもゾーニングは必要だ」と苦言も出ている。
そこで、今回の広告撤去騒動や秋葉原エリアの特殊性について、千代田区の環境まちづくり部担当者に話を聞いた。
千代田区には届け出が出されていなかった
――問題の屋外広告は、どういった経緯や理由で撤去されたのでしょうか。
担当者:東京都の担当者が現地に赴き、有害な広告に対する措置が条項に含まれている「東京都青少年の健全な育成に関する条例」に明記されている「青少年に対して性的感情を刺激する」ものであると判断し指導、11月8日の午前中には撤去されました。千代田区としては、東京都の報告を受けて9日に現地を訪れ、確認と指導を行いました。
――問題の広告は秋葉原の目抜き通りに面したビルに堂々と張り出されていましたが、広告板の設置を千代田区は許可していたのでしょうか。
担当者:秋葉原エリアに屋外広告物を出すには、千代田区に申請を出した上でチェックを受けて屋外広告物許可を取っていただくという手続きが必要になります。これは東京都の屋外広告物条例に基づくもので、23区やその他の市町村共通の指導根拠です。ただし、問題の広告は届け出が提出されておらず、そのため千代田区としても騒動になってから問題を確認したというのが正直なところです。
――実際に広告を撤去するという段階では東京都の主導で動いたということですが、これはなぜですか?
担当者:屋外に広告物を出す場合、関連する条例はいくつかあり、すべてが千代田区で事務を行っているわけではありません。千代田区は「東京都屋外広告物条例」に定められたサイズや位置などの規格を遵守しているかを確認し、問題がなければ許可を出しています。
ただし、「東京都屋外広告物条例」には、広告物の内容に関する詳細な規定がないため、千代田区がイラストや文章などの内容について指導したとしても、法的な根拠はなく強制力がないんです。
そのため今回は、東京都の担当者と連携を取って、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」に基づいて広告物の内容を指導できるようにいたしました。
――今回のように、届け出なく広告物を掲示した場合にペナルティはありますか。
担当者:千代田区としては、条例違反があった場合には是正指導を行います。注意を繰り替えしても改善が見られないなど、悪質であると判断した場合には、条例に沿って然るべき対応をいたしますが、そのようなケースは多くはありません。
――騒動を受けて、千代田区ではどのように対応していきますか。
担当者:先ほど申し上げた通り、千代田区には「東京都屋外広告物条例」に基づく権限しかないため、広告物の内容については指導ができません。ただ、今回の騒動のような例もできましたし、今後は申請時に問題になりそうな内容と認めた場合は担当者が口頭で注意をしたり、必要と判断すれば東京都に情報を提供したりと対応していくことになると思います。
――秋葉原という街の特殊性から、こうした広告も許容すべきだという意見もネット上では一部見受けられます。
担当者:実は、今回の広告撤去についても「無理やり撤去するのはどうなんだ」「表現の自由ではないか」という反対のご意見も多くいただいています。秋葉原は近年、こうしたサブカルチャー文化のおかげで活性化しているという側面もありますし、行政としては表現に対してどのような線引きをしていくか、そういった難しさはあります。
ただし、今回のように一般の方の理解を得られないものを認めることはできませんし、こうした広告が増えていくようであれば看過はできません。千代田区としては、地域の皆さんの目やご意見を大切にしつつ、東京都をはじめ関係各所と連携を取って対応を考えていくというのが今後の姿勢になると思います。
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