海外製ジェネリック薬の密売人、減刑求める陳情書殺到で異例のスピード釈放!
中国湖北省で、医薬品の違法売買で逮捕・収監されていた男が、わずか11カ月で釈放されたことが話題になっている。中国では無認可の医薬品を国内で売買することは重罪のはずだが、この異例ともいえる当局の対応の背景には、一体何があったのだろうか?
「中国新京報」(11月19日付)によると、B型肝炎ウィルスに侵されていた劉福応は、個人輸入したインド製のジェネリック薬を服用していた。この薬によって自身が快方に向かったことから、2017年にネット販売を開始し、多くの顧客に売りさばいていた。そして1年後の18年12月26日、劉は無認可の医薬品を中国国内に持ち込み、販売していたとして警察に逮捕されたのだった。劉はB型肝炎ウイルスのジェネリック薬以外にも、海外から仕入れた向精神薬や抗がん剤などを無許可で販売していたことがわかっている。
この件をメディアが報じると、意外な出来事が起こった。中国全土から、当局に劉の赦免を求める陳情書が大量に寄せられたのである。多くは、劉から薬を購入していた顧客からのもので、劉の薬によって命を救われていたという。こうしたこともあり、劉は顧客から“薬神”と呼ばれていたのだ。
陳情書の影響もあってか、劉が逮捕されてから約8カ月後の今年8月、中国の立法機関である全国人民代表大会常務委員会で、《薬品管理法第124条》の改正が行われ、中国で無認可であっても国外で合法的な医薬品であれば、少量の使用に限り処罰を軽くするという決定が下され、今回の釈放につながったようだ。
中国では、過去にも同様の事件が起こっている。14年に起こった「陸勇事件」だ。白血病になった陸勇という男が、中国国内で販売されている特効薬が高額で購入できなかったため、インド製のジェネリック薬を個人輸入し服用していた。陸は自身の白血病が改善したことから、同じ病気で苦しむ患者のため、善意でジェネリック薬を輸入代行していたところ、偽薬販売およびクレジットカード管理妨害罪などの容疑で、湖南省公安当局に逮捕・起訴された。この事件がきっかけで高額治療費による貧困問題などに世論の関心が集まり、陸の釈放を求める陳情書が寄せられ、15年になって起訴は取り消され、釈放された
中国では国内の製薬会社を優遇するあまり、海外製の医薬品やジェネリック薬の使用が非常に厳しく制限されてきた。保険制度もまだ整備段階にあるため、特に低所得者層にとっては国内の高額な医薬品に手が届かず、また海外製の安価なジェネリック薬も手に入らないという状況が長年続いていたのである。犯罪とはいえ、劉や陸が多くの命を救ったことは間違いない。
(文=青山大樹)
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