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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 『i-新聞記者』忖度とどう闘う?
『i-新聞記者ドキュメント-』公開記念 森達也監督×河村光庸P対談(後編)

日本社会全体を覆う「忖度」と、どう闘う?

海外から見た日本のマスコミは特殊な状況

「ドキュメンタリーだけで食べているのは、世界的に見てもマイケル・ムーア監督ら数人だけです」と森監督。

――『i-新聞記者ドキュメント-』はアニメーション表現もあり、最後は森監督自身のナレーションで締めています。若い観客にも届きやすいように努めたんでしょうか?

 いえ、何も考えていません。単にアニメーションは自分自身がやってみたかっただけで、ナレーションもこの作品にとってベストな演出だろうと考えてのことです。お客さんへのサービスはほとんど考えません。「森友事件」などを字幕で説明しているのは、僕自身が事件を忘れかけていたこともありますが、河村さんからの要望でした。

河村 「森友事件」など基本的なことはわかって観てもらわないと、『i-新聞記者ドキュメント-』は楽しめませんから。海外の人たちにも観てほしいでしすね。

 中国とタイの記者から取材を受けた話をしましたが、共産党が統治する中国から見ても、軍事政権下にあるタイから見ても、今の日本のマスコミの状況は、かなり特殊だと感じられたようです。同じアジアだから通じるところもあるでしょうが、はっきりと物事を捉える欧米人が観たら驚くと思いますよ。

――劇映画『新聞記者』や今回の『i-新聞記者ドキュメント-』を企画できるのは、河村プロデューサー自身が邦画界の異端児だからではないでしょうか。河村プロデューサーは、「スターサンズ」を立ち上げる前は出版社を経営。さらにそれ以前は、沖縄の「星の砂」などいくつかのブームの仕掛け人でもあったそうですね。

 そうなんですか?

河村 若い頃に、「星の砂」で商売していた時期がありました。「スターサンズ」という社名は、そこからつけたものです(笑)。

 河村さんは根っからの山師ですよ。映画プロデューサーとして、正しい姿だと思います。

河村 私は映画をプロデュースする上で、3つのポイントを心掛けているんです。ひとつはインディペンデントであること、もうひとつはシニア、そして映画を本業だとは考えないことです。森監督もそうでしょ?

 ドキュメンタリーだけでは食べていけません。本を出したり大学で教えたり、いろいろして暮らしている状況です。そうか。だからできることがある、という意味ですか。なるほどね。

――森監督からは「山師」という言葉が出ましたが、河村プロデューサーの目には、今の映画業界なら勝算は十分ありと映っているんじゃないでしょうか?

河村 多くの映画会社は、映画製作と配給を別々にやっているわけです。その点、私は企画の段階から、どんなふうに宣伝しようかと考えながら取り組んでいます。今の日本の映画界は、ぼや~っとした状況。エッジの利いたもの、強いフックのあるものが必要です。人の心に何か引っ掛かるものがないと、ヒットはしません。そういう意味では、今はチャンスだと考えています。

 要は、河村さんは組織人ではないわけです。組織人には映画プロデューサーは務まらない。ヘタしたら首を吊ることになるかもしれないけど、逆にカジノで豪遊できる立場になるかもしれない。そんな気質じゃないと、面白い映画はプロデュースできないと思います。映画は、そんなジャンルです。でも現状、多くの日本の映画プロデューサーは組織人になっている。だから冒険ができない。まあ僕の周囲には、冒険するプロデューサーは結構いますけれど。彼らが救いです。

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