小説から始まり、映画、ゲームまで…世界的人気を誇る新金脈! 急速に広がる“中国SF”の世界
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映画やゲームにも広がる中国SF
さて、ここまで中国におけるSF小説を見てきたが、ここでSF映画に目を転じてみよう。近年、『オデッセイ』や『メッセージ』など、ハリウッド産のSF映画のストーリーにおいて、中国が重要な役回りを果たすことが非常に多くなっている。最近のハリウッド映画は、アリババなど、中国資本から資金提供を受けることも多く、また、中国人が関わっているとなると、中国での観客動員に拍車がかかるため、このような例が増えていると考えていいだろう。とはいえ、これらはあくまでアメリカ人が作ったハリウッド映画であったのだが、今年、スタッフもキャストもほとんどが中国人の純中国産SF映画が、春節中の興行収入約330億円という、驚異的なヒットを記録した。
『流転の地球』という邦題で、現在Netflixでも配信されているその映画は、『三体』の著者である劉慈欣の短編が原作だが、キャラクター、ストーリーは原作とは大幅に異なる。映画では、太陽膨張の危機から逃れるため、地球全体を遠い宇宙に移動させる、という壮大かつトンデモなプロジェクトが行われている未来を舞台に、中国人たちが地球の危機を救うために奮闘するさまが、ハリウッドにも引けを取らないCG技術で展開される。
全体的に中国人の誇りをくすぐる中華バンザイなストーリーではあるが、地上が荒廃していても、人工知能による交通違反減点システムが生真面目に機能していたり、放り込まれた留置所の看守に、主人公の祖父が賄賂として、長年収集したアダルトVRソフトを渡そうとしたり、何やら中国社会への風刺とも取れそうなシーンも多い。未来の地下都市なのに、中国文化の伝統はしっかり守られているあたりも含め、「中国でもSF大作は作れるぞ!」といった、中国SF界の躍進を感じさせる。
SFといえば、ゲームもSF要素の強いジャンルであり、最近は中国産のスマホゲームが日本語版でリリースされて、日本でも人気を博すようになっている。
『ドールズフロントライン』は、『少女前線』という中国版のタイトルが日本では商標登録の関係で使用できず、この名前になったのだが、日本アニメの作風そのままのイラストに、声優まで日本人を使っており、日本産のゲームと比べてもまったく遜色のないクオリティである。兵器を美少女化したキャラクターには、機械生命体の戦術人形という設定がなされており、SF的にも目端の利いた作品となっている。
中国産スマホゲームは、ほかにも『アズールレーン』『荒野行動』などが人気を博しており、これからも新たなタイトルが続々日本に上陸しそうである。SF小説では、際立って注目されているのは劉慈欣ひとりであるものの、多くの作家がそれに続いており、また映画やゲームといったさまざまなジャンルに裾野を広げつつある中国SFは、中国の体制を批判する人にもそうでない人にも、見過ごすことのできない存在感をさらに増す勢いがある。日本人は、中国人は日本の文化の後追いをしているようなイメージをいまだに持っているかもしれないが、実はすでに中国文化は日本を飛び越えて、アメリカを始め世界で注目されるまでに成長していたのだ。(サイゾー8月号『中韓(禁)エンタメ大全』より)
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