IZ*ONEが事実上の活動休止状態に 韓国でなにが起こっているのか?
日韓合同アイドルグループIZ*ONE(アイズワン)の活動が危機的状況になっている。
IZ*ONEは人気オーディション番組『PRODUCE 101』(Mnet)の第3シーズンとして製作された『PRODUCE 48』(Mnet/2018年6月~8月放送)を通じてつくられたグループ。日本からは、宮脇咲良、矢吹奈子(HKT48)、本田仁美(AKB48)の3人がAKB48グループからの出向のようなかたちでIZ*ONEに参加している。
『PRODUCE 101』シリーズは、視聴者が直接投票することでオーディション合格者を選ぶ仕組みが売りで(そのため視聴者は番組内で「国民プロデューサー」と呼ばれる)、自らグループの結成に関わることのできる当事者性が多くの視聴者を熱狂させてきた。
しかし、『PRODUCE 48』の次のシーズンとして放送されX1を輩出した『PRODUCE X 101』(Mnet/2019年5月~7月放送)の最終結果をめぐり放送直後から不正疑惑が浮上。Mnetの運営会社であるCJ ENMや番組に参加した芸能プロダクションが家宅捜索を受けるなどしてきた。
その結果、今月5日に『PRODUCE 101』シリーズのプロデューサーであるアン・ジュニョン氏らが逮捕。取り調べの結果、『PRODUCE X 101』および『PRODUCE 48』において投票結果を操作して順位を変えたことを認めた。アン・ジュニョン氏は芸能プロダクションから40回以上接待を受け、その金額は1000万円近いとの報道も出ている。
IZ*ONEはちょうど今月11日に初めてのフルアルバム『BLOOM*IZ』のリリースを控えており、それにともなって映画の公開やバラエティ番組への出演が多数決まっていただけに、この事件は活動に大きな影響を及ぼしている。
まず『BLOOM*IZ』は報道を受けて発売を延期。予約分に関しては返金すると発表されている。また、アルバム発売日に予定されていた特別番組『COMEBACK IZ*ONE BLOOM*IZ』(Mnetなど)の放送も急きょキャンセルとなった。
バラエティ番組にも影響が出た。IZ*ONEのメンバーが出演した『アイドルルーム』(JTBC)、『驚きの土曜日-ドレミマーケット』(tvN)の放送が中止になるなど、彼女らが出演した番組は放送を中止したり、IZ*ONEメンバーの出演シーンをカットしたりなどの対応に追われている。
不正投票事件の影響は、韓国国内のみならず日本にも波及。今月15日にはIZ*ONEの初めてのワールドツアーを追ったコンサートフィルム『EYES ON ME : The Movie』が公開される予定だったが、日本においては公開が中止に。配給元の東宝は<諸般の事情を受け、関係各所と協議のうえ、本作の公開を中止させていただくことに決定いたしました>とコメントしている。
IZ*ONEの不正問題にファンや世間はどう反応したか?
こういった状況に対し、IZ*ONEのメンバーに同情的な声は大きい。不正をしたのは番組製作サイドであり、IZ*ONEのメンバーも、番組に参加していた練習生たちも、皆が被害者である。
ツイッター上では「#WIZONELOVEIZONE」(「WIZ*ONE」はIZ*ONEのファンクラブおよびファンダムの名称)というハッシュタグが生まれ各国でトレンド入り。彼女たちを守ろうという声をあげている。
とはいえ、Mnetの不正に対して韓国社会から怒りの声が起きているのも、また事実だ。
大統領府のホームページ上にある国民請願掲示板にはIZ*ONEとX1が地上波のテレビ番組に出演することを防ぐ旨の請願が出された。そこには「順位操作は番組を見ていた視聴者を馬鹿にしたものであり、社会に蔓延する採用不正や就職詐欺とまったく同じ文脈の罪」といった主張があるという。
この文言の根っこには、横行するコネ就職や、それによって解決されない貧富の格差・格差の固定といった社会問題への怒りがある。そのような社会状況がある以上、不正投票が明るみになったにもかかわらず何事もなかったかのようにグループが活動再開できるかは疑問だ。
もともと不正投票の疑惑がもちあがっていたX1は2019年8月にデビューしたが、デビュー曲のプロモーションにおいて『ミュージックバンク』(KBS 2TV)、『音楽中心』(MBC)、『人気歌謡』(SBS)といった地上波の音楽番組に出演することはできていない。
IZ*ONEの今後はどうなるのか?
IZ*ONEは昨年10月のデビュー以降、女子中高生を中心に人気が爆発。BTS、SEVENTEEN、TWICE、BLACKPINKらと並んでK-POPブームを牽引するグループとなっている。
今年8月から9月にかけて行われたワールドツアーの日本公演では、幕張メッセ、さいたまスーパーアリーナといった大会場でソールドアウトに。年末の『NHK紅白歌合戦』の出演者としてあげる下馬評もある。
IZ*ONEはもともと2021年4月までの期間限定で結成されたグループ。活動できる時間が限られているだけに、最も大事なアルバムリリースタイミングで突如生まれてしまった活動休止期間を惜しむ声は大きい。IZ*ONEのメンバーも被害者である。
とはいえ、放送局と芸能プロダクションが行った不正の問題が解決されない限り、世論はこれまで通りの活動を受け入れないだろう。今後の展開を見守りたい。
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