『クローズZERO』をどう更新するか? ヤンキーマンガ論から観る映画『HiGH&LOW THE WORST』(後編)
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「貧困と半グレ」ハイローに隠された生々しい問題提起
藤谷 たしかに今作も、要所要所で生々しいところはありますよね。「貧困と半グレ」みたいなテーマだったり。
加藤 そうなんですよね。ものすごいアクションに覆われているから気づかないだけで、結構生々しい話をしている。
藤谷 NHKスペシャルで半グレ特集があったじゃないですか(2019年7月27日放送『半グレ 反社会勢力の実像』)。番組内で半グレのリーダーが「俺達はグレてるわけじゃない」「まっすぐ育った結果こうなった」みたいなことを言ってて、ほぼほぼ『クローズ』じゃん、って思ったんですよ。ある種そういう、ダメな意味での男らしさを補強するものになってしまっている側面も『クローズ』にはあった。
加藤 「真似すると危ない」という、ヤンキーものやヤクザ映画にずっとつきまとっているテーマですよね。「フィクションなんだから真似するやつなんかいない」って言う人もいますけど、肯定的な面でいえば、『スラムダンク』を観てバスケを始める人はいっぱいいる。それと同じように、ヤンキーマンガを読んでヤンキーっぽくなる人もいますよ。僕の周りの何人の少年たちが『クローズ』を読んでからウォレットチェーンをつけ始めたことか。そういう側面に対して、ハイローはかなり配慮しているんだろうなとは思います。
藤谷 それでいうと今作ですごいと思ったのが、この20年くらいくすぶっていた「ヤンキーが大人になる」問題をちゃんと描いたことです。ヤンキーものにおいて大人になるというとヤクザになるか堅実に生きるかで、後者の生き方も作品内で提示してはいるものの、説得力が薄かったんですよ。その後、『闇金ウシジマくん』あたりが大ヒットした影響からリアルアウトロー路線が主軸になっていって、2000年代後半からは『ギャングース』など半グレを扱うものが増えていった。景気が悪くなっているせいもあって、そういう路線がリアリティを持っていたと思うんですね。そんな中にあって、ちゃんと働いてお金を貯める姿を見せて「子どもは夢を見るだけで終わるけど、大人は夢を叶えることができるんだ」って語るのは、綺麗事ではあるけれど、この作品の中では説得力を持って響いたと思う。
加藤 その言葉を言うのが小沢仁志というのも非常に説得力がありますよね。小沢仁志に言われちゃかなわない。フィリピンに行って映画を撮ったり、銃を撃ちまくったりしている大人ですからね、小沢仁志さんは。
編集部 「大人になる」と言えば、唯一の原作キャラとして大人になったパルコ(塚本高史)が登場しましたね。あれは原作ファンとしてはどうなんですか?
藤谷 主人公と絡んでもいないし、単に登場人物とすれ違ったこの街の人として存在している距離感で、よかったと思います。
加藤 僕も肯定的ですね。原作のパルコのポーズもやってくれて、「パルコは元気でやってるんだな」とわかるところも含めてよかったです。
藤谷 『その後のクローズ』的なことですよね。
編集部 ちなみに、おふたりのお気に入りのキャラクターは?
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