全米でブレイクしたラッパーも…共産党の禁止令が出ても大人気! 中国ヒップホップの潜在能力
#カルチャー #中国 #ヒップホップ
中国の大人気アイドルとコラボした日本人ラッパー
ここで主題からややそれるが、中国においてCDはもはや化石のようなもので、音楽ストリーミングサービスが日本よりはるかに普及しており、その市場は大企業Tencent(騰訊)の独占状態にある。そして、それを追い上げるNetEase(網易)が面白い動きを見せていると、日本の音楽業界関係者A氏はいう。
「Tencentが展開する2大アプリ、KuGou(酷狗)とQQ Music(QQ音楽)は合わせて2億1200万人の月間アクティブユーザー数を誇るのに対し、NetEase Cloud Music(網易雲音楽)は5280万人と大きく水をあけられています(19年3月時点)。しかし、Tencentがユーザー数の多さにあぐらをかく一方、NetEaseはオンラインゲーム『荒野行動』を国内外でヒットさせるなど勢いに乗っており、音楽ストリーミングでも特に若者を取り込もうと海外のヒップホップやダンスミュージックに目を向けています」
その中でNetEaseは日本人アーティストにも注目し、エイベックスやユニバーサル ミュージック、日本コロムビアといった大手レコード会社とも包括契約を結んでいるのだ。
「例えば映画『君の名は。』が中国で大ヒットして以降、人気が急上昇しているRADWIMPSの場合、NetEase Cloud Music上のフォロワー数は45万人とかなりの集客力があります。そして日本人ラッパーを見ると、ANARCHYやJP THE WAVYらの曲が配信されているのですが、その中ではKOHHの約4万7000人というフォロワー数がダントツに多い。さすがにRADWIMPSと比べると見劣りしますが、あのカニエ・ウェストでも14万人なので、まったく悪い数字ではありません」
また、日本ではほとんど報じられていないが、今年5月、KOHHと中国の大人気アイドルJustin(黄明昊/48ページ参照)がコラボした曲「MARIA」がNetEase Cloud Music限定で配信され、中国のデイリーチャートで2位を記録している。
「NetEaseが主催するKOHHの中国ツアーが計画されており、その前に中国でのKOHHの知名度を上げるべく同曲が制作されたようです」(同)
ここまで見てきたように、中国のヒップホップ文化は禁止令後も一応は発展が望めそうだが、和田氏が指摘したように海外のラッパーの招聘という点ではある種の鎖国状態にある。しかしそれも、KOHHのような例が定着すれば、ライブ現場における海外のラッパーとの化学反応により、中国のヒップホップが独自進化する――。そんな日を心待ちにしたい。
(英語通訳/金田あい)
中国ヒップホップ動画を配信!――〈ZHONG.TV〉ってなんだ?
台湾系カナダ人のスタンリー・ヤン氏によって2010年に設立されたYouTubeチャンネル。中国のヒップホップ・シーンをサポートすべく動画コンテンツを制作し、世界に向けて発信している。『The Rap of China』出場ラッパーのMVもキュレーションしており、チャンネル内でPG One、GAI、Jony J、Tizzy Tなど現在中国で人気を博しているほとんどラッパーのMVを閲覧できる。15年には、よりアンダーグラウンドな中国人ラッパーを発掘すべく、2ndチャンネル〈ZHONG.TV2〉を開設した。下は、バズったGAI「超社会」とPG One「中二病」のMVである。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事