トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 千鳥×タバコはもはや鉄板?
テレビウォッチャー・飲用てれびの「テレビ日記」

『相席食堂』『テレビ千鳥』……千鳥×タバコは相性抜群!?

千鳥

テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(10月20~26日)見たテレビの気になる発言をピックアップします。

千鳥・大悟「一日中、海見て、タバコをワンカートン吸うだけや」

「これは薬物を吸っているのではなく、時間を吸っているのだ」

 昔読んだ本に、そんなことが書いてあった。タバコについてのエッセイだったと思う。出典を覚えていないので正確ではないものの、確か、タバコを吸うのは薬物中毒とかというよりも、居心地が悪かったり手持ち無沙汰だったりする時間を埋めるためなのだと、そんなことが書いてあった。愛煙家がタバコにこだわる理由をずっと疑問に思っていた非喫煙者の僕は、なんとなくそれで納得した。医学的には間違っているのかもしれないけれど。

 そんなタバコに関する話題を、なぜか先週はテレビでよく見かけた。ここでは2本だけ取り上げる(どちらも千鳥の番組だが)。

 まず、22日の『相席食堂』(朝日放送)。野性爆弾のくっきー!が京都府・伊根町を、ピースの又吉直樹が大分県・保戸島をそれぞれ訪れていた。で、又吉のロケが最高だった。

「むちゃくちゃ向いてないんちゃうかな」

 港町でのふれあい旅を前に、そう不安を口にしていた又吉。船着き場から離れ、誰もいない道をトボトボと歩く。そこで、海のそばのベンチにひとり座る男性(76)に出会う。老人 は、黒い肌に白い帽子、白いストライプのシャツ。そして、胸ポケットにはタバコが入っている(大悟によると銘柄はハイライト)。

「どういう島ですか?」

 そう又吉に尋ねられ、老人は答える。

「まぁ、昔の……」

 その声が、なんとも特徴的。ガラッガラ。あまりにもガラッガラのハスキーボイスなのだ。おそらくタバコの影響で仕上がったのだろう。その声を聞いた千鳥の2人は、すかさず「ちょっと待てい!」ボタンを押した。

 老人の語りは続く。かつてこの島ではマグロの遠洋漁業が盛んだった。自分も昔は船に乗っていた。しかし、漁船を減らし、魚の価格を上げようとした国策もあり、補償金と入れ替えに船を降りた。そんなあれこれを語っているときのこと、突然、耳慣れない音がした。

「ちーよ」

 老人から発された声だ。たぶん、「えーと」とか「んーと」みたいな会話の合間に入れる声だと思うのだけれど、島の方言も入っているのか、何よりタバコの影響のためか、その声は聞き取りにくく「ちーよ」に聞こえる。声というか、セミが鳴いているようですらある。

 又吉は、この老人の案内で島を巡ることに。島で唯一の食堂に連れて行ってもらい、マグロ料理に舌鼓を打つ。これまた一軒しかない理髪店に行き、マッサージをしてもらう。最後は老人の自宅に上がらせてもらい、コーヒーをごちそうになる。そしてその間、何度も絶妙なタイミングで、例の声が老人から漏れる。

「ちーよ」

 声がする、というよりも、音が漏れる、という表現が近いかもしれないその「ちーよ」を聞くたびに、千鳥は膝から崩れ落ちて笑う。テレビを見ているこちらも腹を抱えた。

 それにしても、実際のところ老人は何を言っていたのだろう。そういえばVTRを見ていた大悟が、こんな解説を入れていた。

「ワシな、島で生まれたからわかんねんけど、ホンマにもうなんもないねん、することが。一日中、海見て、タバコをワンカートン吸うだけや。そんならこれが仕上がる」

 マグロ漁で栄えた島の時間、漁業が衰退していく時間、高齢化率が高まっていく時間――。なるほど、タバコを吸うことが時間を吸うことだとすると、あの老人は、海を見ながら島の時間を吸い続けてきたのかもしれない。あの「ちーよ」は、圧縮された島の時間が軋む音だったのか。

12
ページ上部へ戻る

配給映画