菅原経産相の電撃辞任の裏でうごめく「ポスト安倍」をめぐる”権力者たちの暗闘”
#政治 #安倍晋三 #菅官房長官 #安倍政権
有権者への「寄付行為」などを追及されていた菅原一秀経済産業相が、就任からわずか一カ月余りで辞任した。
10月上旬より「週刊文春」(文藝春秋)が、選挙区の有権者らにカニやメロンなどを贈っていた疑惑を、証拠となるリストと共に報道。
さらには秘書へのパワハラや秘書給与ピンハネ疑惑など、多くのスキャンダルを2週にわたって掲載した。極めつきは同誌の10月24日発売号で、菅原氏の公設秘書が選挙区内の有権者に香典2万円を渡す様子を写真付きで掲載した記事。それまで国会での追及をのらりくらりかわしていた菅原氏も、この写真によってトドメを刺された格好になった。
「カニやメロンの贈答は、リストがあるとはいえ、10年以上前の話。菅原氏も菅義偉官房長官に『昔のことなので問題ありません』と説明していた。しかし、香典は国会で追及されているさなかの10月17日に渡している。しかも、写真という動かぬ証拠を押さえられた。24日時点で、自民党や公明党の幹部からも『これではもう持たない』との声が上がりはじめ、菅氏もかばいきれなくなった。外堀が埋まり、25日には急転直下で辞任せざるを得なくなった」(政治部記者)
安倍政権の強気な答弁姿勢もあり、週刊誌が閣僚の不祥事を報じても辞任にまで追い込まれるケースはかつてよりは少なくなっている。だが、菅原氏のケースでは「逃げ切る」時間も作らせず、週刊文春の記事が回を重ねるごとに詳細、確信的になっていったことで、辞任にまで追い込んだ。週刊文春の関係者は、その実情をこう語る。
「菅原氏に、とにかく人望がないんですよ。文春チームは公設、私設秘書を含めて30人くらいに取材をしていますが、ほとんどの人が取材に応じて、菅原氏のやり方に対して悪しざまに言う。ウチの記事を見た関係者も義憤にかられたようで、だんだんと菅原氏に『近い』人物からも情報提供が来るようになった。それが香典の現場写真へとつながったのです」
閣僚が、それも1カ月で辞任となれば、安倍首相はその任命責任を問われることになる。25日朝、安倍首相は沈痛な面持ちで「任命責任は私にあり、こうした事態になってしまったことに対して国民に深くお詫びしたい」と記者団に語ったが、今後は国会で野党から厳しい追及を受けることになる。
自分を窮地に追い込んだ菅原氏の軽率な行動に安倍首相は怒り心頭のはず、と思いきや意外にも安倍首相の顔に悲壮感はみられないという。その理由を、自民党関係者はこう解説する。
「菅原さんの入閣を安倍首相に薦めたのは、菅官房長官です。菅原さんは、今春に菅さんを囲む中堅議員による『令和の会』を発足させるなど、如実に菅さんにすり寄っていた。安倍さんとしては『菅さんがそこまで推すなら』という体で菅原さんの入閣を受けいれた経緯がある。官房長官による『身体検査』もクリアしたとされていたので、身辺はキレイにしたのだろうと安倍さんも考えていたはずです。それがこんな事態になったのだから、安倍さんとしては『菅さんがお墨付きを与えたのに話が違う』という姿勢でいられる。外から見れば任命責任は自分にあるが、自民党内部では『菅さんの責任』となっているのです。事実、自民党内部からは菅さんへ批判の声が上がっています。内心、安倍さんは菅さんがどうリカバリーするのか冷静に見ていると思います」
とはいえ、安倍首相にとって菅官房長官は大事な右腕であり、政権の屋台骨のはず。菅原氏の任命責任を菅官房長官に“押し付ける”ような態度を取るのは、いったい何故なのか。そこには「ポスト安倍」をめぐる水面下での駆け引きがあるようだ。
「政権運営の手腕において安倍さんが菅さんを評価していることは確かだが菅官房長官、『ポスト安倍』となると話は別です。安倍さんの本音は『俺の次は俺』と思っていて、自民党総裁4選の可能性はまだまだ捨てていない。菅さんは『令和おじさん』としてお茶の間でも知名度が上がり、最近では女性誌などの取材も受けるなど露出を増やしている。政治的にも裏方から表舞台に出ることが多くなり、5月には官房長官としては異例の“外交デビュー”を果たし、北朝鮮による日本人拉致問題などを巡って米政府高官らと会談しました。こうした動きに対して安倍さんは敏感になっており、菅さんが政権内で目立った行動をすることは快く思ってない節があります。そこにきて『菅案件』ともいえる今回の菅原さんの入閣をめぐる失態は、安倍さんにとっては自民党内での立場をより盤石にすることにもつながった。だから安倍さんは涼しい顔をしていられるわけです」(前出・自民党関係者)
菅原氏の辞任の裏には、権力者たちの「暗闘」が見え隠れする。
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