トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > その他 > サイゾーpremium  > 中国映画1兆円市場・真の良作
バブルと検閲の(裏)事情

世界第2位の映画大国に自由はない! 突如公安が乗り込んできて検閲! 中国映画1兆円市場・真の良作

中国に愛嬌を振りまくハリウッド映画人たち

 検閲に触れる前に、まずは、中国映画産業の現状について確認してみよう。

 かつては中国の庶民にとって贅沢な娯楽であった映画鑑賞だが、近年の急速な経済成長に伴う生活水準の向上によって、観客の数も爆発的に増加。特に、ここ数年は全国あちこちにシネコンが建設され、スクリーン数は中国全土で6万にまで膨れ上がっている。この数字は、アメリカの4万スクリーンを抜き去り世界一。このような同国の「映画バブル」はすでに、日本でも話題となっている。作品別の興行収入では、1位を獲得した中国映画『オペレーション:レッド・シー』は36・5億元(約589億円)、外国映画でも『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が23・9億元(約386億円)『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が16・9億元(約273億円)というまさにケタ違いの興行成績をあげており、このうち、中国国外の映画会社に対しては興収の25%を分配する取り決めが行われている。

 そんな爆買いならぬ「爆見」状態の中国の映画市場に対して、ハリウッドの映画関係者は熱視線を注いでいる。近年製作された映画のうち少なくない作品が中国市場に食い込むために、さまざまな方法を駆使しているのだ。『映画は中国を目指す─中国映像ビジネス最前線─』(洋泉社)などの著書がある北海学園大学教授・中根研一氏は中国映画に対するハリウッドの姿勢を次のように解説する。

「以前はハリウッド映画において、中国人俳優は端役程度の存在として起用されることが多かったのですが、近年は、ストーリーにしっかり絡んだ役柄で登場することが増えていますね。16年1月に中国企業、大連万達グループに買収されたレジェンダリー・ピクチャーズが制作を手がけた『パシフィック・リム:アップライジング』ではジン・ティエン、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』ではチャン・ツィイーといった中国人女優が作品の中でも重要なキャラクターを演じ、中国の観客に対してアピールをしているほか、マーベル・シネマティック・ユニバースでは、初のアジア系スーパーヒーローを主人公とする『シャン・チー』を準備しています。ハリウッドの中にある出演者の民族的多様性を重視する流れにも後押しされ、主要登場人物としての中国人俳優の起用がかつてよりも明らかに多くなっていますね。

 また、作品の内容だけでなく、中国国内で展開されるプロモーション活動も、以前に増して活発化しています。19年だけでも、『デッドプール2』、『アベンジャーズ/エンドゲーム』、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』、『Xメン/ダーク・フェニックス』といった大作映画の監督やキャストが映画の公開前に訪中し、サービス過剰なほどさまざまな話題作りのイベントに積極的に参加。また、昨年大ヒットを記録した『アクアマン』や、今年公開の『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』などは、本国よりも早い封切り日を設定しています」

 しかし、中国市場に参入しようともくろむ外国映画の前に立ちはだかるのが、中国政府が設定する「映画輸入制限」という制度。中国では、年間に上映される外国映画の本数が当局によって決められており、18年に公開されたのはわずか40本。10年代を通じてその数は徐々に拡大傾向にあるものの、他国に比較すると、ほとんどその門戸は開かれていない。

 また、この映画輸入制限本数については政治的な状況にも大きく左右され、近年の規制緩和の流れがいつ途絶えるかは定かではない。

「日中間が領土問題に揺れた13~14年には、日本映画が公開されませんでした。また、16年、韓国がTHAADミサイル配備を決定すると、中国政府は韓国文化の輸入規制を実施し、ドラマや映画の放送・上映ができなった過去もあります。現在、輸入制限は規制緩和の方向に動いていますが、今後、政府間の関係が緊張すれば特定の国の映画を輸入規制によって排除するといった対策をとることも十分にあり得るでしょう」(前出・中根氏)

 日本やアメリカのような国家とは異なり、伸長する中国映画市場の背景には、国家の思惑が強く影響する。トランプと習近平が繰り広げる貿易戦争を、映画関係者はヒヤヒヤした目で見つめているのだ。

1234
ページ上部へ戻る

配給映画