深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.554
“カメ止め”上田慎一郎監督の才能は本物なのか? 噓と救済をめぐる物語『スペシャルアクターズ』
2019/10/25 20:00
#パンドラ映画館
無名俳優たちをキャスティングした上田慎一郎監督の『カメラを止めるな!』(18)は興収31億円の大ヒットを記録し、口コミで人気が広がっていく様子は“カメ止め”現象と呼ばれるまでになった。無名監督から一躍注目の存在となった上田監督の劇場用長編映画第2弾『スペシャルアクターズ』が現在公開中だ。『カメ止め』の斬新な物語構成は2014年に解散した劇団「PEACE」の舞台「GHOST IN THE BOX!」から着想を得たものだったことから、完全オリジナル作となる『スペシャルアクターズ』で上田監督は真価を問われる立場となっている。
実際のところ、想像もしなかった大ヒットの直後だけに、新作の脚本を執筆するのは相当のプレッシャーだったようだ。若手監督の起用で定評のある「松竹ブロードキャスティング」から2017年11月の段階でオリジナル作のオファーを受けていた上田監督は、“カメ止め”ブームがようやく落ち着き始めた2018年12月から動き始める。年明けから新作映画用のキャストオーディションとワークショップを行い、キャストにアテ書きする形で脚本を執筆しようしたが、『カメ止め』での成功が逆に重荷として大きくのしかかり、まったく書けない状態に陥ってしまった。
本作の監督補を務める妻のふくだみゆきさん、「松竹ブロードキャスティング」のプロデューサーらに励まされ、またキャストからも意見やキーワードを募り、クランクインが迫る切羽詰まった状況の中で生まれたのが、プレッシャーに遭うと失神してしまうという気弱な主人公の物語だった。自身が置かれた状況をそのまま生かす形で、上田監督は撮影1週間前にようやく完成稿を書き上げた。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
17:20更新
イチオシ記事
【対談】ドラマプレミア23『Qrosの女 スクープという名の狂気』原作者・誉田哲也✕元週刊文春記者・赤石晋一郎 週刊誌が暴く“真実”、そして「知りたがる側」と「暴かれる側」の痛み