テンセントにネットフリックスも参戦! もはや毒肉まんは過去の話、国家も支援する「中国食動画」
#中国 #動画 #グルメ
大人気美人動画配信者は政府のプロパガンダ?
中国の食コンテンツでもうひとつ、注目すべきは素人による動画配信だ。グルメの世界においても多数の中国版ユーチューバーが出現し、芸能人並みの人気を得ている配信者もいる。
テンセントが発表した「2018年十大美食紅人」(紅人は人気配信者の意)に挙がった10人はそれぞれ、オーソドックスな中華料理のレシピを紹介する人や中国やアジアのスイーツをひたすら食べ歩く女性、美少女大食い系などジャンルもさまざまだ。皆、「優酷(Youku)」やテンセントビデオ、ビリビリ、微博などのプラットフォームを利用しており、フォロワー数は数百万人を抱えている。先の十大美食紅人でトップに輝いた「美食家大雄」【5】は、家庭料理を紹介するごく普通の内容だが、語り口調や手際の良さ、短時間で美味しい料理を作る小技が受け、フォロワー数は800万人に上る。
ひときわオリジナリティ溢れる人気配信者のひとりが「亦公室小野(オフィスの小野さん)」【6】という25歳の女性だ。ユーチューブにもチャンネルがあり、日本語の動画説明もある。ただし日本人ではなく、四川師範大学出身でIT企業に勤める高畑充希似の中国人だ。日本名を名乗っているのは日本文化に親しみを持つ90后だからなのかもしれない。彼女はオフィスにあるもので料理を作るという一風変わったテーマを採用。17年に「ウォーターサーバーで火鍋を作ってみた」がバズって有名配信者となった。工作や実験の要素を取り入れたクッキング動画が世界中で受け、ユーチューブのチャンネル登録者数は670万人を突破。昨年、中国本土在住者で唯一のカリスマユーチューバーとしてグーグルからも表彰された。ちなみにユーチューブのアクセスが禁止されている中国で、彼女を含めた多くの食関連の配信者がどうやって動画をアップしているのか謎だが、国内動画サイトで配信した作品を、香港などにいるパートナーがアップしているようだ。テーマが食で“無害”だからか、今のところ中国当局は黙認している様子。
もうひとり、十大美食紅人で忘れてはいけないのが「李子柒」【7】だ。四川省の山奥で祖母と暮らすアラサーの美女で、動画にナレーションはなく、彼女の声も一切入らない。ただ淡々と素朴な日々の暮らしを伝えるものばかりだ。映像は素人とは思えないクオリティで、美しい風景とともに自給自足の中国スローライフを紹介する彼女の動画は瞬く間に人気が出た。微博のフォロワーはなんと1698万人。ユーチューブのチャンネル登録者数は496万人に上っている。
ただし李子柒をめぐっては、さまざまなうわさも飛び交う。「四川省の省都・成都でDJをしていたが父の死をきっかけに田舎に戻った」という設定だが、売れないタレントでバックにプロデュースする男性がいるという話もある。彼女の微博での投稿は中国共産党青年団のアカウントが頻繁にリツイートして称賛していることから、中国政府のプロパガンダではないかと見る向きもある。数々の謎に包まれている彼女だが、それもまた魅力になっているのだろうか。
彼らは動画広告や企業とのタイアップ、番組出演などでマネタイズする。中には法人化して投資を受ける配信者もいる。テンセントが発表した「2018微博アカウント発展レポート」によれば、月10億PV以上ある20のカテゴリーのひとつに「美食」がランクインしている。関連アカウントは現在1・5億以上あり、MCN(配信者のマネジメント会社)は150を越えるという。今後も関連コンテンツは増えていくだろう。
「食の本場」の名の通り、中国の食コンテンツは想像をはるかに超える規模で発展し、欧米を凌駕しつつある。今後、どんな作品が発表されるのか楽しみだ。(サイゾー8月号『中韓(禁)エンタメ大全』より)
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