“全裸監督”Netflixがさらにヤバい問題作を投下!! 園子温監督が描く恐怖の洗脳劇『愛なき森で叫べ』
#映画 #園子温 #Netflix
恋愛も家族も単なる幻想にすぎない?
だが本作が厄介なのは、園監督が描こうとしているのはサイコパスによるただの残酷ショーではないということ。高校時代の親友(川村那月)が亡くなって以来、ずっと自宅に引きこもっていた美津子(鎌滝えり)は電話をかけてきた村田の甘言に釣られ、ついつい心を開いてしまう。村田は美津子宅に上がり込み、世間体を気にする美津子の父親(でんでん)や母親(真飛聖)も洗脳し、一家はあっけなく崩壊。村田に命令され、家族同士が虐待し合うという地獄絵図が繰り広げられる。家族のつながりとは幻想に過ぎないのか? 恋愛感情と洗脳とを明確に線引きすることはできるのか? 悪の権化・村田の出現によって、すでに壊れかけていた家族という名のシステムも、曖昧模糊とした恋愛感情も簡単に吹き飛ばされてしまう。
予定調和に収まらない園子温作品らしさをより感じさせるのは、田舎から上京してきたシン(満島真之介)がたまたま知り合ったジェイ(YOUNG DAIS)たちと自主映画づくりを始めるエピソードだろう。愛知県豊川市から上京して自主映画を撮り始めた園監督自身の青春時代の体験を、村田の凶悪犯罪パートと融合させることで物語の行方がまるで予測できないものとなっている。美津子とは演劇仲間だった妙子(日南響子)から村田の存在を知らされたシンたちは、村田をモデルにした実録映画を撮り始める。このことを知った村田は逆に面白がり、シンたちが撮る自主映画のプロデューサーを買って出ることに。当然ながら手練手管に優れた村田によって、シンたちの自主映画チームも簡単に乗っ取られてしまう。
寝食を共にする映画の撮影クルーは、一種の「疑似家族」であり、誰が撮影現場のイニシアチブを握るかで作品のトーンは大きく変わっていく。恋愛や家族と同様に、映画製作もまた幻想の産物なのだろうか。美津子たちの家族も、シンたちが撮る自主映画も、悪の洗脳師・村田によってボロボロにされていくが、そんなボロボロに荒廃した世界に残された真実のかけらを、園監督はカメラに映し出そうとする。視聴者を選ぶ作品であることは間違いないが、オーディションで園監督に抜擢された日南響子、鎌滝えり、中屋柚香ら若手女優たちが椎名桔平に喰らい付いていく体当たり演技が印象に残る。
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