多部未華子『これは経費で落ちません!』”不愛想”が生むユーモアと愛嬌
#多部未華子 #女優の花道
10月1日、”多部ちゃん”こと多部未華子が結婚してしまった!
芸能人が結婚するとTwitterは阿鼻叫喚の嵐となる。大多数の人にとっては、お約束の大喜利ネタみたいなものだが、多部ちゃんの結婚に対しては激震というか、自分も含めてショックを受けている人の本気度がかなり高かったように感じた。
うまくいえないが、彼女のファンは、他の人にはわからない彼女の魅力を自分だけが知っていると思い込んでいたのではないかと思う。
それは恋愛感情とは違うもので、例えるならば、人に懐こうとしない小動物にこっそり餌をあげてかわいがるような気持ちだったのではないかと思う。
そんな多部ちゃんの魅力が最大限に発揮されていたのが先日まで放送されていた『これは経費で落ちません!』(NHK)だろう。
彼女が演じたのは石鹸会社・天天コーポレーションの経理課で働く女子社員・森若沙名子。いつも的確な仕事をする森若は、不明瞭な領収書を社員が持ってくると「これは経費で落ちません」と毅然とした態度で突っぱねるため、一部の社員からは煙たく思われているが、それ以上に同僚からは信頼されている。
普段の森若は無愛想でほかの女子社員と違って媚びた姿を見せないため、どこかとっつきにくく思われており、彼女自身も仕事とプライベートはきっぱりと分けている。
そんな森若が営業部の社員・山田太陽(重岡大毅)から猛烈にアプローチされ、だんだん気持ちが揺らいでいく過程がコミカルかつ繊細に描かれているのが、ラブコメとしての本作の魅力のひとつ。
もうひとつは、本作が会社を舞台にしたミステリードラマだということ。物語は毎回、領収書の不明瞭な経費が気になった森若が「ウサギを追うな」と思いながらも、ついつい経費の謎(ウサギ)が気になって、社員のことを調べ出してしまうこと。つまり本作の森若は、お金の流れを追うことで社内のトラブルを解決する”経理探偵”なのだが、普段はクールで無愛想な森若が、太陽のアプローチにはてんでダメで、ついには彼の告白を受け入れてデレデレになってしまうという緩急の面白さこそが本作の魅力だったと言えよう。
同じ時間帯(金曜夜10時)に連続ドラマ『凪のお暇』(TBS系)が放送されていたため、話題性はそちらに持っていかれた感があるが、後半の追い上げにおいては『これ経』も負けてなかった。キャスティングも物語も『凪のお暇』に比べるとだいぶ地味だったが、その地味だが丁寧な作りが、じわじわと染み入り、熱狂的なファンを増やしていった感がある本作。それはまさに、多部未華子の魅力そのものだったと言えるだろう。
多部は現在30歳。小学校5年の時にミュージカル『アニー』を見たことが、演技の仕事を志したきっかけだったという。
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