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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 物議を醸す問題作『ジョーカー』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.552

不寛容さが生み出す最凶ヴィラン『ジョーカー』 物議を醸す問題作だが、現実社会と大きな相違点

ジョーカーの存在は絵空事なのか?

白塗りメイクでテレビ出演を待つアーサー。“殺人ピエロ”ジョーカーが覚醒を果たそうとしていた。

 下流生活から抜け出すことができず、社会の底辺でもがくアーサー/ジョーカーに感情移入する人は日本でも少なくないだろう。だが、現実社会と映画『ジョーカー』とでは大きく異なる点がある。今のこの国では福祉にしか頼ることができない人たちは怠け者だと責められ、罪を犯した者は司法よりも先に、ワイドショーのコメンテイターやSNSユーザーたちが一斉に断罪する。社会からはみ出した者はすべて自己責任とみなされ、彼らの行き場所はどこにもない。富裕層を優遇し、労働者からの搾取を続ける権力者には怒りは向かわず、社会的弱者や外国人をバッシングすることで日々のストレスを発散させているのが、今の美しい日本の姿だ。

 横柄なビジネスマンや既成利権にあぐらをかくセレブたちに銃口を向けたジョーカーは、社会に不満を持つ人々にとってのカリスマ的存在となっていく。クリームの1968年のヒット曲「ホワイト・ルーム」が流れる中、ジョーカーの怒りに賛同した人々が続く。どこまでが心を病んだアーサーの妄想なのかは、定かではない。だが、本作のクライマックスで描かれるような民衆の一斉蜂起は、怒りという感情を去勢されたこの国ではあまりにも遠い絵空事に感じられてしまう。

(文=長野辰次)

『ジョーカー』

監督・脚本/トッド・フィリップス 脚本/スコット・シルバー

出演/ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ、フランセス・コンロイ

配給/ワーナー・ブラザーズ映画 R15+ 10月4日より全国ロードショー中

(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved   TM & (C) DC Comics

http://wwws.warnerbros.co.jp/jokermovie

 

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最終更新:2019/10/11 14:41
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