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日刊サイゾー トップ > 社会  > 視覚障害者の転落事故、どう防ぐ?

相次ぐ視覚障害者のホーム転落事故、どうしたら防げる? 

視覚障害者は声をかけてもらえると助かる

28歳の頃に目の異常に気づき、33歳で全盲に。目の治療中にボイスオーバーに出会い、独学でiOSのエキスパートに。同じ苦しみを抱える人たちにその技術を伝えるべく、MDSiサポートを設立。視覚障害者向けのiOSの出張講師として活躍中。

――視覚障害者の方が、電車のドアの位置や、ホームと電車の隙間などを白杖でチェックしている最中に、周囲の人が白杖をつかんで、それを正しい位置へ導こうとする場面をたまに見かけます。親切心でやっていることと思われますが、あの行為はどうなのでしょう?

井上さん 白杖は僕らにとってのセンサーなので、それを第三者につかまれてしまうと、感覚が麻痺してしまいます。お気持ちはありがたいですが、白杖には触れないでいただきたいです。

――駅通路などで道案内をする場合の注意点を教えてください。

井上さん 腕や手をつかまれてグイグイ引っ張られると、これまた恐怖を感じます。ですから、健常者が「つかむ」のではなく、視覚障害者に「つかませる」ほうがよいのかも。健常者のほうから「私につかまってください」と言って、肩、肘、リュックのベルトなどを視覚障害者につかませる。その上で、「歩くの速くないですか?」「もう少しゆっくり歩きましょうか?」などと話しかけながら、ゆるやかに先導してあげるのがスマートかつ安全でしょう。

――ホームと電車の間に大きな隙間がある場合や、階段に差し掛かった場合は、どのように伝えたらよいでしょう?

井上さん 僕の場合、「この先、隙間が大きく空いていますよ」「もうすぐ階段がありますよ」と伝えてくれれば大丈夫です。距離感や段差の高さは、白杖で確認できますので。

 ただし、それがすべての視覚障害者に当てはまるとは限りません。中には身体的な制約があり、階段を容易には上がれない方もいますので、「階段で大丈夫ですか?」「エスカレーターやエレベーターまで案内しましょうか?」などと優しく話しかけながら、その方が望む方法で案内していただけるとありがたいです。

――お互いにコミュニケーションを取ることが大事ということですね。

井上さん はい。でも、健常者同士だと視覚で補完できるコミュニケーションも、片方が見えていないというだけで、途端に難しくなるんですよ。たとえば、「あと何歩」「あと何センチ」という指示。通常、健常者がやや前方にいて、視覚障害者がその斜め後ろにいることが多いですよね。その状況で「あと一歩」と言われても、健常者から見た「一歩」なのか、それとも視覚障害者から見た「一歩」なのかが不明瞭で、こちらは判断に迷います。

 ですから、「あなたから見て、あと一歩です」などと、きめ細やかなコミュニケーションを心がけていただけると大変助かります。

――勉強になりました。井上さんのお話を聞くまでは、「視覚障害者の方に気軽に声をかけるのは失礼だったり、ありがた迷惑だったりするのかな」と思っていました。

井上さん 全然そんなことはありません。基本的には大助かりです。視覚障害者もさまざまで、全盲の方もいれば、弱視の方もいます。中にはせっかく親切心でお声がけしていただいたのに、「大丈夫だから放っておいて」と、つっけんどんな対応をする視覚障害者もいるかもしれませんが、大目に見ていただけたらと思います。

 人間誰しもタイミングが悪いときって、あるじゃないですか。僕だってタイミングによっては、「この道は慣れているから大丈夫です」と言ってお断りすることがあります。暑い寒いでイライラしているときもあるし、遅刻したりおなかが空いたりしてイライラしているときもある。これは健常者の方も同じだと思いますが、不機嫌なときに他人から話しかけられると、ついつい対応が悪くなるじゃないですか。

 だからもし無下に断られたとしても、「じゃあ、今後は声がけするのをやーめた!」とは思わないでいただきたいです。そうやって支援者をひとりでも失ってしまうと、今回のような事故のリスクが高まるからです。

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