トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 社会  > 視覚障害者の転落事故、どう防ぐ?

相次ぐ視覚障害者のホーム転落事故、どうしたら防げる? 

白杖を使ってホームの端を確認する井上さん

 視覚障害者のホーム転落事故が相次いでいる。今月1日には京成押上線京成立石駅のホームで66歳の女性が、その翌日には山手線新宿駅のホームで47歳の元ブラインドサッカー日本代表選手が線路に転落、電車に接触して亡くなった。後者は事故か自殺か判然としていないが、いずれにしても、事前に周囲の声がけなどのサポートがあれば防げた悲劇だった可能性があるという。ホームで白杖(はくじょう)を持った視覚障害者を見かけた場合、周囲にいる健常者はどのように介助すればよいのか? 全盲の身でありながら視覚障害者支援を行っている「MDSiサポート」代表の井上直也さん(36歳)に話を聞いた。

***

 東京・青梅市在住の井上さんは後天性の視覚障害者だが、視力を失ったあとも、iPhoneのボイスオーバー(画面に表示された文字を読み上げてくれる機能)をフル活用して積極的に外出している。電車やバスを使い、iOS(iPhoneやiPad向けのOS)の出張講師として全国の視覚障害者の元を訪ねるほか、プライベートで新宿へ遊びに行く機会も多いという。

――井上さんは視覚障害者の中では行動派として知られ、ひとりで電車やバスを乗り継いで遠方まで出かける機会も多いそうですね。そんな“外出慣れ”した井上さんでも、周囲のサポートを必要とする場面はありますか?

井上さん 「常に大なり小なり、何かしらで困っている」というのが本音です。特にホームの上は危険度が高いエリアですので、僕をはじめとする視覚障害者の多くは「誰かに声をかけてほしい」と思っています。線路はどちら側にあるのか、ホームの端はどこなのかという大きな問題に直面しているほか、時計が見えないため「今何時だっけ?」と思っているときもあるし、駅のアナウンスを聞き逃して「次はどこ行きなんだろう?」と迷っているときもある。ですから僕の場合、電車に乗る前は「駅員さんや、通りすがりの優しい人が声をかけてくれたらいいな」と思いながら、ホームを歩いていることが多いです。

――ホームで視覚障害者を見かけたら、どのように声をかけたらよいのでしょう?

井上さん 今回、新宿駅で犠牲になった方は「自ら線路に下りる姿が目撃された」と報じられていますが、その前の段階ではおそらく、黄色い点字ブロックの一歩後ろに立って電車を待っていたはず。そういうときに気軽に声をかけてくれるだけでいいんです。「一緒に乗りましょうか?」とか「次の電車に乗るんですか?」とか。

 その方がもし困っていれば、「一緒に乗ってもらえますか?」とか「次の電車は何時何分発のどこ行きですか?」などと答えるでしょうし、手助けが不要であるなら「大丈夫です。ありがとうございます」と答えるでしょう。仮に自殺を考えていたとしても、周囲から温かい声をかけていただくことで、踏みとどまるケースもあるかもしれない。

「相手が視覚障害者」と考えると、物事が難しくなってしまいがちです。ホーム上で両手に大きな荷物を持っているおばあちゃんがいたら、「ひとつ持ちましょうか?」「どこまで行くんですか?」「何かお手伝いできることはありますか?」などと話しかけるじゃないですか。それと同じ感覚で声をかけてもらえたらうれしいですね。

――声をかける際の注意点はありますか?

井上さん 耳元で突然「大丈夫ですか?」と声をかけられると、目が見えない人はビックリしてしまいますので、最初はある程度の距離感を保って、うっすら聞こえる程度の声量で声をかけてもらえると助かります。困っている視覚障害者は「ひょっとしたら自分に話しかけてくれたのかな?」と思って立ち止まったり、耳を傾けたりするでしょう。

――相手の体に手を添える行為はどうなのでしょう?

井上さん 基本的には、相手の承諾を得てから手を添えていただきたいです。もちろん、命に関わるような危険な場面では問答無用でグイッと引っ張ってもらって結構ですが、そうじゃないときに無言でいきなり手を添えられると、目が見えない人はビックリしてしまうからです。

 特に気をつけていただきたいのは、電車に乗り込む直前ですね。誰も声をかけてくれなかった場合、視覚障害者は気合を入れて自力で前へ進もうとします。「よし行くぞ!」と集中力を高めて、白杖を使って電車のドアの位置などを確認しようとする。その瞬間、無言でいきなり背中に手を添えられたりすると、背後から押されたような感覚になって恐怖を覚えます。ですから、体に触れる際には、事前に「肩に手を添えますよ」「腕を触りますよ」などとお声がけいただけると助かります。

123
ページ上部へ戻る

配給映画