“元・地下芸人”脳みそ夫が振り返る「マウントばかり取っていた」あの頃
#お笑い #インタビュー #脳みそ夫
EXITを見て、本当のオシャレを知った
――「あらゆる世代に笑ってほしい」という感じではないですか?
脳みそ夫 本当は、それがすごくあって。逆にターゲットって、まったく決めてないんです。幅広くやりたいから。年いった人って、ダジャレ好きじゃないですか。僕も好きなんです、ダジャレ。だから、そういう真似したくなるようなフレーズをネタに入れていこうみたいな気持ちはあります。
――「おったま遣隋使」とか「びっくら古今和歌集」とか。
脳みそ夫 そういうのだと、おじさんも気軽に言ってくれるんで。
――そこはかとない教養を感じます。
脳みそ夫 いや(笑)。教養っていうか、『おぼっちゃまくん』という漫画が昔から大好きで、その「茶魔語」からかなりのヒントをもらった感じなんですよね。「おはヨーグルト」とか「友だちんこ」とか。
――しかし言葉のセレクトが、ベタに見せつつも、ちょっとオシャレなんですよね。
脳みそ夫 あぁ、そうですね(笑)。でも、EXITさんも歴史の用語を語尾にくっつけたり、やってますね。
――了解道中膝栗毛的な
脳みそ夫 そうそうそう。だから僕の中ではわりとオシャレだと自分で思ってたんですけど、「あ、本当のオシャレって、こういうのなのかな」って思わされてはいますね(笑)。
――いや、脳みそ夫さんもオシャレです。
脳みそ夫 (笑)。ただの親父ギャグにはしたくはなかったんで。ちょっと普通にパッと思いつかない感じには、してるつもりです。
――自分の中で、なんらかの法則はあるんですか?
脳みそ夫 普段あんまり使わない「びっくらこいた」とか「おったまげた」とかを語呂のいい歴史用語に乗せる、ってことですかね。
――あえてちょっと今使わない言葉を引っ張ってくる。
脳みそ夫 ただそれだと限られちゃうんですよね、感情表現も。そこを「こんちわーっす」「あざーっす」「すいませーんっす」で補完するみたいなのはあります。
――なるほど。あと、ネタの途中で突然出てくる「こんちわーっす」は、どういうコンセプトなんでしょうか?
脳みそ夫 難しい質問ですね……。なんていうんですかね、“1回だけ使える復活の薬”みたいな感じ。ちょっとスベっても、それ1回やると戻せるんですよ。ただ、1つのネタの間に2回も3回もやるとウケない(笑)。
――脳みそ夫さんは一度、人生に「パチプロ」を挟まれたり、ストレートに芸人にはならなかった。そのちょっとした遠回りが、逆によかったなって思うことはありますか?
脳みそ夫 いや……今のところないですね(苦笑)。以前、テリー伊藤さんと対談させてもらった時に、パチプロ時代のことを話したらテリーさんがすごいウケてくれて、その時はよかったなと思いましたが。それ以外はないですかね。もっと早く芸人やってればよかったなって、すごく思います。
――芸の肥やしには、ならなかったんですね。
脳みそ夫 最初、「脳みそ」とコンビを組んでたんですけど、相方は水槽に浮かんだ脳みその模型で、そいつとしゃべるっていうのを8年やってた。その頃は、そういうのが好きだったんです。とりあえず、好きなことをやっとかないと、って。
――そこでとことんやったから、また違うものにも挑戦できる。
脳みそ夫 そうですね。あと、いきなり僕が芸歴1年目から今の感じだったら、たぶんアンチも多かったのかなと思うんで。
――ああ……。確かに、“この人、かつて脳みそとコンビ組んでたのに”って思うと、より滋味深く感じるかもしれないです。
脳みそ夫 芸人が芸人を引き上げてくれるみたいなところって、あるじゃないですか。そういう仲間からの助けを、すごく感じます。変なことやっていた、その頃があるから。
――フリーでやってる時と事務所に入ってからは、全然違いますか?
脳みそ夫 あぁ、もう全然違いました。フリーの時って、自分のためだけにしかやってなかったんですよね。でも、事務所に入ったら事務所の人たちも仕事で動いてくれてるんで、結果出さないと申し訳ないし、お金にもならないなっていう意識が芽生えたりとか。それが、よりお客さんに向けてどうやるか、みたいなのを考えるきっかけになったと思います。
――意識が変わるんですね。
脳みそ夫 そうなんです。あとね、今も地下の劇場ですごい面白いフリーの子いっぱいいるんですけど、やっぱり世界が狭いんですよね。すごい狭いコミュニティで褒められて、それで満足してしまう。需要と供給がすごい狭いところでぐるぐるしてる。それだとやっぱり……もうちょっと年齢を重ねていくと、この先何もいいことないなって気づきました。
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