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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > ボケを支えるツッコミ芸人の身体性
テレビウォッチャー・飲用てれびの「テレビ日記」

中川家礼二、フット後藤、霜降り粗品……ツッコミ芸人の身体性

吉本興業公式サイトより

テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(9月22~28日)見たテレビの気になる発言をピックアップします。

博多大吉「面白い漫才師さんは音消しても面白いってわかる、って教わった」

 それにしても、テレビの第一線で活躍する芸人たちがお笑いを語るのは面白い。

 先週、2つのバラエティ番組で、立て続けに類似の企画が放送された。26日の『アメトーーク!』(テレビ朝日系)と、28日の『ゴッドタン』(テレビ東京系)である。

『アメトーーク!』の企画は「ツッコミ芸人が選ぶ このツッコミがすごい!」。誰のどんなツッコミが優れているのか、どこがすごいのか、芸人たちがそれぞれの視点で語り合っていた。

 たとえば、サンドウィッチマン・伊達のシンプルで無駄のないツッコミのすごさ、ナイツ・土屋の精密機械のような淡々としたツッコミのすごさ、和牛・川西の自我を抑制してネタの役に入りきったツッコミのすごさ、爆笑問題・田中のツッコミとその前の客を引きつけるフリの話術のすごさ――。

 交わされた話題はこのように多岐にわたるのだけれど、ここでは次のワードに注目したい。「身体」である。

 博多華丸が語ったのは、中川家・礼二の手の動き。礼二は漫才中に手をいろいろと動かしてツッコミを入れるが、次の展開に移る際にそれをスーッと下げる。この自然な動きがいい。邪魔にならない。対して、漫才を始めたばかりの芸人は手の動きに無駄が多い。

 この話を受けて、相方の大吉も「動きって、ものすごく大事」と語る。

「最初のころに、面白い漫才師さんは音消しても面白いってわかる、って教わったんですね。実際やってみるとホントそうなんですよ」

 また、フットボールツアワー・後藤のツッコミ。彼はいつも大声を張り上げてツッコんでいるように見える。しかし、礼二いわく、実は大声を出してそうでそんなに出してない。あそこには技術があるのだ、と。

「首のとこだけにスジをクッといかして、大きい声でやってるというようなとこを見せよるんですよ」

 そして、霜降り明星・粗品の手のひらを上に向けた例のツッコミ。本人が語るところによると、最初のころは人さし指を大きく突き上げるポーズでツッコんでいた。しかし、そのころはあまりウケがよくなかった。少しずつ手を下げていき、手元に収める今の形になりウケるようになった。初期のツッコミがイマイチだった理由を、粗品は次のように説明する。

「ボケの方へのリスペクトが全然なかったなと思って」

 礼二の手の下ろし方、後藤の首のスジ、粗品の手の形。視聴者や観客として普段は気にとめない小さな身体の動きが、大きな笑いを支えている。

 そういえば、番組で芸人らはツッコミの「怖さ」も同時に語っていた。伊達のシンプルなツッコミはすごい。土屋の淡々としたツッコミはすごい。粗品の一言で刺すツッコミはすごい。けれど、同じことを自分がやるとしたら怖い、と。

 なるほど、第一線で活躍するツッコミ芸人たちはそれぞれ、客前で自分の全身をさらしながら、自分の固有の身体と合致するスタイルにたどり着いた。だとすれば、その身体性を伴ったスタイルは他者と入れ替え不能。別の人間が形だけ同じことをやっても、確実にスベる。そのことが同じツッコミ芸人として、それこそ身体でわかっているからこそ、怖い。

 お互いのスタイルに寄せられた「怖い」という声は、ツッコミ芸人たちによる最大のリスペクトの交換であるように思えた。

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