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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 江戸時代の至高のエロスがスクリーンで
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.550

スクリーン上に甦った江戸時代の至高のエロス! 大人たちが楽しむ文化記録映画『春画と日本人』

細部に宿るエロスの神

鳥居清長の名作「袖の巻」の復元を試みるプロジェクト。江戸時代の版画技術がとても高かったことが判明する。

 鳥居清長が残した春画「袖の巻」を、現代の彫り師と刷り師が再現する試みを本作では紹介している。現代の最高の技術を持って名画の復元に挑んでいるのだが、どうしても女性の陰毛部分をふんわりと表現することが難しい。江戸時代の出版技術がとても高く、陰毛という細部にまで当時の人たちがこだわり抜いていたことが伝わってくる。エロスの神さまは、まさに細部に宿っていた。

 浮世絵は日本文化として評価されているにもかかわらず、浮世絵と表裏一体の関係である春画は、国内でずっと不当な扱いを受けてきた。浮世絵コレクターの第一人者だった東京国立博物館の元館長・高橋誠一郎(1884~1982)は膨大な数の春画も有していたが、亡くなった後は浮世絵だけ慶應大学の図書館に引き取られ、春画は処分されたとのこと。慶應大学の塾長も務めた高橋誠一郎は慶應大学において神のような存在であり、春画を収集していたことを知られては困ると関係者は判断したらしい。

 そんな高橋誠一郎の生前の逸話も語られ、心を和ませる。経済学者であり、文部大臣も務めた高橋誠一郎は多忙を極めた仕事の合間、春画を眺めることでリラックスしていたらしい。その気持ち、すごく分かります。

 昭和や平成時代に出版されたエロ本の数々も、将来的には文化遺産として価値が出るのだろうか。100年後、200年後、大英博物館で「日本のエロ本&AV大回顧展」が開催されている様子をふと夢想してみる。

(文=長野辰次)

『春画と日本人』

監督・撮影・編集/大墻敦 ナレーター/濱中博久

配給/ヴィジュアルフォークロア 18歳未満入場禁止

9月28日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開

 (c)大墻敦

https://www.shungamovie.com/

 

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最終更新:2019/09/30 10:35
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